ウルドゥー語のコピュラ文「AはBだ」について書く。ラテン文字への転写については「アラビア文字などの翻字・転写」を参照。以下,ウルドゥー文字は右から左へ書くが,転写や日本語訳は左から右へ書く。
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基本的なしくみ
ウルドゥー語で「AはBだ」と言う場合,動詞ہونا(hōnā)を使う。現在形では主語の人称と数によって,以下のように活用する。
ہوناの現在形
単数 | 複数 | |
---|---|---|
1人称 | ہوں hūṇ |
ہیں haiṇ |
2人称 | ہے hai |
|
3人称 | ||
親称 | ہو hō |
- میں جاپانی ہوں۔
- maiṇ jāpānī hūṇ.
- 私は日本人だ。
- یہ خوبانی ہے۔
- yē xūbānī hai.
- これはアンズです。
疑問詞のない疑問文は,文頭にکیا(kyā)を置く。このکیاは疑問詞の「何」という意味もある。疑問詞がない場合は文末のイントネーションが上がり,疑問詞がある場合は疑問詞の部分でイントネーションが上がる。
- کیا آپ جاپانی ہیں؟
- kyā āp jāpānī haiṇ?
- あなたは日本人ですか?
- یہ کیا ہے؟
- yē kyā hai?
- これは何ですか?
コピュラ文の否定文は,ہونا(hōnā)の活用形の前にنہیں(nahīṇ)を置く。否定文ではہونا(hōnā)の活用形が省略されることもある。
- میں جاپانی نہیں ہوں۔
- maiṇ jāpānī nahīṇ hūṇ.
- 私は日本人ではありません。
メモ1
人称代名詞آپ(āp)は,2人称・複数の相手に対して使うほか,一人の相手に対する丁寧な言い方「あなた」の意味もある。これに対応する動詞の活用はہیں(haiṇ)。
تم(tum)も2人称・複数だけでなく単数でも使われ,こちらは親しい間柄で用いられる。対応する動詞の活用が異なるので,上の活用表では,親称として独立させた。
その他の場合
現在形以外の時制も,動詞ہونا(hōnā)を活用させて表現するが,活用の仕方は違うこともある。例えば過去形の場合は,動詞が主語の性と数に応じて活用し,以下のようになる。
ہوناの過去形
単数 | 複数 | |
---|---|---|
男性 | تھا thā |
تھے thē |
女性 | تھی thī |
تھیں thīṇ |
- کل موسم خراب تھا۔
- kal mausam xarāb thā.
- 昨日は天気が悪かった。
例文6では,موسم(mausam)「天気」が男性名詞・単数なので,動詞が男性形のتھا(thā)になっている。
用例
現在形の範囲でいくつか例文を書いておく。
- اسلامآباد پاکستان کا دارالحکومت ہے۔
- islām-ābād pākistān kā dār-ul-hukūmat hai.
- イスラマバードはパキスタンの首都だ。
- اردرو پاکستان کی قومی زبان ہے۔
- urdū pākistān kī qaumī zubān hai.
- ウルドゥー語はパキスタンの国語だ。
- وہ میرے بھای ہیں۔
- vo mērē bhāī haiṇ.
- 彼らは私の兄弟です。
- وہ میری بہنیں ہیں۔
- vo mērī bahinēṇ haiṇ.
- 彼女たちは私の姉妹です。
- یہ سیب میٹھا ہے۔
- yē sēb miṭhā hai.
- このリンゴは甘い。
- یہ شکرقندی میٹھی ہے۔
- yē šakarqandī miṭhī hai.
- このサツマイモは甘い。
- یہ شکرقندی لذیذ ہے۔
- yē šakarqandī lazīz hai.
- このサツマイモはおいしい。
メモ2
ウルドゥー語の形容詞には,語尾が変化するものと変化しないものがある。変化するものは,関係する名詞の性・数に応じて語尾が変化する。
例えば,例文11・12のمیٹھا(miṭhā)とمیٹھی(miṭhī)は「甘い」の男性・単数形と女性形。例文13のلذیذ(lazīz)「おいしい」は変化しない形容詞である。
参考文献
- 『ニューエクスプレス ウルドゥー語(CD付)』白水社,2012年,萩田博,萬宮健策