このブログで用いるビルマ文字のラテン文字化について書く。当ブログでビルマ文字にラテン文字表記を添える場合は,以下の方法に従う。
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ビルマ語
ビルマ語の場合は,『ニューエクスプレス ビルマ語(CD付)』で使われている発音表記を参考に転写する。基本的には同じだが,子音のうち,以下の3つは別の文字で転写する。
NEビルマ語 | 当ブログ |
---|---|
ŋ | ṅ |
ɲ | ñ |
ɕ | š |
また,形態素の境界にハイフン(-)を,語と助詞等の境界にイコール(=)が使われているが,当ブログでは特に語の構造を示したいとき以外は使わない。
以下,概略を示す。詳細は『ニューエクスプレス ビルマ語(CD付)』を参照。
子音
子音字
က
k
ခ
kh
ဂ
g
ဃ
g
င
ṅ
စ
s
ဆ
sh
ဇ
z
ဈ
z
ည
ñ
ဋ
t
ဌ
th
ဍ
d
ဎ
d
ဏ
n
တ
t
ထ
th
ဒ
d
ဓ
d
န
n
ပ
p
ဖ
ph
ဗ
b
ဘ
b, ph
မ
m
ယ
y
ရ
y, r
လ
l
ဝ
w
သ
t̪
ဟ
h
ဠ
l
အ
ʔ
以上33字が頭子音(音節の最初に現れる子音)を表す。ဘ(b, ph)とရ(y, r)には2通りの発音があり,語によって異なる。
加えて,4種類の子音補助記号がある。これらは子音の発音を変えたり,介子音(頭子音の後に現れる半母音的な子音)を表す。
1補助記号(ျ)は,介子音yを表す。ただし,က(k),ခ(kh),ဂ(g)にこの記号がついたときは,ကျ(c),ချ(ch),ဂျ(j)と発音が変わる。
များ(myá)
「多い」
ဂျပန်(jăpàɴ)
「日本,日本人」
2補助記号(ြ)も,介子音yを表す。ただし,က(k),ခ(kh),ဂ(g),င(ṅ)にこの記号がついたときは,ကြ(c),ခြ(ch),ဂြ(j),ငြ(ñ)と発音が変わる。
ပြာ(pyà)
「青い」
ကြီး(cí)
「大きい」
3補助記号(ွ)は,介子音wを表す。
သွား(t̪wá)
「行く」
ခွေး(khwé)
「犬」
4補助記号(ှ)は,鼻音(ṅ, ñ, n, m)・流音(l)・半母音(w)の無声化を表す。これはမှ(hm)のように頭にhをつけて表記する。ただし,ယ(y)および,ရ(y, r)にこの記号がついたときは,ယှ(š),ရှ(š)と発音が変わる。
မှန်(hmàɴ)
「正しい」
ရှစ်(šiʔ)
「8」
複数の子音補助記号を組み合わせて使うこともある。
母音と末子音と声調
ビルマ語には単母音が7種類,二重母音が4種類,末子音(音節の最後に現れる子音)が2種類,そして声調が3+1種類ある。
母音・末子音・声調は,子音字の上下左右にいろいろな記号をつけて表す。しかし,その体系はちょっと複雑なので,以下おおまかな種類と転写の例だけまとめておく。
1末子音がない音節には,7種類の単母音a, i, u, e, ɛ, ɔ, oが現れる。
ဘာ(bà)
「何」
ထီး(thí)
「傘」
လူ(lù)
「人」
လေး(lé)
「4」
ဆယ်(shɛ̀)
「10」
တော(tɔ́)
「森」
မိုး(mó)
「雨,空」
2末子音がある音節には,7種類の単母音に加えて,4種類の二重母音ai, au, ei, ouが現れる。末子音はɴ, ʔの2種類がある。
ဆိုင်(shàiɴ)
「店」
ထောင်(thàuɴ)
「1000」
စိတ်(seiʔ)
「心」
အုတ်(ʔouʔ)
「レンガ」
3声調は,下降調(â),低平調(à),高平調(á)の3種類がある。ラテン文字転写は,母音の上にそれぞれの記号をつける。ただし,末子音がʔの音節は必ず下降調になるので,記号を省略する。
また,声調を伴わず軽く発音される軽声の音節は,ăのように表記する。
လ(lâ)
「月」
ဒါ(dà)
「これ」
ကိုး(kó)
「9」
တစ်(tiʔ)
「1」
အနီ(ʔănì)
「赤色」
母音・末子音・声調の転写方法は『ニューエクスプレス ビルマ語(CD付)』と変わらないので,詳しくはそちらを参照。
参考文献
- 『ニューエクスプレス ビルマ語(CD付)』白水社,2015年,加藤昌彦