フィンランド語の品詞について書く。参考文献をもとに,名詞,形容詞,代名詞,数詞,動詞,副詞,側置詞,付加詞,接続詞,間投詞の10個を扱う。
- 目次-CONTENTS-
グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
1
1人称
2
2人称
3
3人称
cop
コピュラ
gen
属格
ine
内格
nom
主格
pl
複数
prs
現在
prtv
分格
sg
単数
また,グロス中の数字が略号ではなく語の意味を表す場合は,「2」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・抽象的概念など,様々なものの名前を表す。
フィンランド語の名詞には,二つの数(単数・複数)と,14の格(主格・属格・分格・内格・出格・入格・接格・奪格・向格・様格・変格・欠格・具格・共格)の変化がある。主語なら主格,目的語なら属格や分格……というように,文中での役割やいろいろな条件によって格変化を使い分ける。
- Suomen pääkaupunki
-
Suome-n
フィンランド-gen
pääkaupunki
首都.nom
- フィンランドの首都
- Asun Helsingissä.
-
Asu-n
住む-1sg.prs
Helsingi-ssä
ヘルシンキ-ine
- 私はヘルシンキに住んでいる。
例文1のSuomenはSuomi「フィンランド」の属格形で,「~の」という所有の意味を表している。また,例文2ではHelsinki「ヘルシンキ」の内格形が,「~に」という場所の意味を表している。
名詞の例
koira
「犬」
kissa
「猫」
pää
「頭」
kaupunki
「都市」
asema
「駅」
vesi
「水」
silmälasit
「眼鏡」
suomi
「フィンランド語」
ruotsi
「スウェーデン語」
形容詞
人や物の属性・性質・状態などを表す。
フィンランド語の形容詞は,名詞を修飾するときには名詞の前に置かれ,名詞の格変化に一致する。また,比較級・最上級の変化もある。
- hyvä ilma
-
hyvä
良い.sg.nom
ilma
天気.sg.nom
- 良い天気
- Nämä silmälasit ovat uudet.
-
Nämä
この.pl.nom
silmälasi-t
眼鏡-pl.nom
ovat
cop.3pl.prs
uude-t
新しい-pl.nom
- この眼鏡は新しい。
例文3は形容詞+名詞の組み合わせ例で,単数・主格で格変化が一致している。例文4はコピュラとともに使われた場合。ここでは複数名詞のsilmälasit「眼鏡」に合わせてuusi「新しい」が複数主格になっている。
形容詞の例
hyvä
「良い」
kaunis
「美しい」
uusi
「新しい」
iso
「大きい」
tuore
「新鮮な」
kylmä
「寒い」
valkoinen
「白い」
punainen
「赤い」
代名詞
ほかの語の変わりをしたり,ほかの語を指し示す語。
人称代名詞・指示代名詞・疑問代名詞・関係代名詞・相互代名詞などの種類がある。いずれも格変化を行う。
- Hän asuu Helsingissä.
-
Hän
彼.nom
asu-u
住む-3sg.prs
Helsingi-ssä
ヘルシンキ-ine
- 彼はヘルシンキに住んでいる。
- Missä asut?
-
Mi-ssä
何-ine
asu-t
住む-2sg.prs
- あなたはどこに住んでいるんですか?
例文5のHänは3人称・単数の人称代名詞「彼,彼女」である(例文では「彼」とした)。例文6のmissäはmikä「何」の内格で,場所を尋ねたいときに用いる。
代名詞の例
minä
「私」
sinä
「あなた」
hän
「彼,彼女」
tämä
「これ,この」
tuo
「あれ,あの」
se
「それ,その」
mikä
「何」
kuka
「誰」
数詞
数を表す語。基本的な数を表す基数詞と,順序を表す序数詞がある。いずれも格変化をする。
- kaksi kissaa
-
kaksi
2.sg.nom
kissa-a
猫-sg.prtv
- 2匹の猫
- Hän asuu toisessa kerroksessa.
-
Hän
彼.nom
asu-u
住む-3sg.prs
toise-ssa
2番目の-ine
kerrokse-ssa
階-ine
- 彼は2階に住んでいる。
基数詞と結びつく名詞には基本的に単数分格になる(例文7)。例文8は序数詞の例で,場所を表すためにtoinen kerros「2階」が内格形になっている。
1から10までの基数詞
1
yksi
2
kaksi
3
kolme
4
neljä
5
viisi
6
kuusi
7
seitsemän
8
kahdeksan
9
yhdeksän
10
kymmenen
動詞
動作や状態を表す。
フィンランド語の動詞は,法・時制と主語の人称・数によって活用をする。活用は基本的に語尾の変化で表す。形容詞に近い働きをする分詞や,名詞に近い働きをする不定詞がいくつかある。
- Hän asuu Helsingissä.
-
Hän
彼.nom
asu-u
住む-3sg.prs
Helsingi-ssä
ヘルシンキ-ine
- 彼はヘルシンキに住んでいる。
例文9のasuuはasua「住む」の3人称・単数・現在形である。動詞の活用から主語の人称・数が分かるため,1・2人称の人称代名詞は省略されるのがふつう。
動詞の例
puhua
「話す」
kirjoittaa
「書く」
lukea
「読む」
nähdä
「見る」
kuunnella
「聞く」
tehdä
「する,作る」
mennä
「行く」
asua
「住む」
副詞
動詞・形容詞・副詞・文などを修飾し,様態・程度・場所・時間などの意味を表す。格変化はしないが,一部の副詞には比較級・最上級がある。
- Tänään on kylmä.
-
Tänään
今日
on
cop.3sg.prs
kylmä
寒い
- 今日は寒い。
例文10のtänään「今日」は時間を示す副詞。
副詞の例
tänään
「今日」
eilen
「昨日」
milloin
「いつ」
jo
「もう」
täällä
「ここに」
hyvin
「良く,上手に」
liian
「…すぎる」
vain
「…だけ」
側置詞
フィンランド語には,名詞の前に置いて使う前置詞と,名詞の後に置いて使う後置詞がある。前置詞は分格と,後置詞は属格と結びつくことが多い。語によっては,前置詞としても後置詞としても使えるものがある。
格変化はしないが,人称代名詞の属格とともに用いる後置詞には,所有接尾辞がつく。
- Asun aseman lähellä.
-
Asu-n
住む-1sg.prs
asema-n
駅-gen
lähellä
近くに
- 私は駅の近くに住んでいます。
例文11のlähelläは後置詞としても前置詞としても用いられ,「…の近くに」を表す。ここでは後置詞として,aseman「駅(属格)」の後に置いて使われている。
側置詞の例
kanssa
「…と一緒に」
ilman
「…なしで」
edessä
「…の前に」
lähellä
「…の近くに」
yllä
「…の上に」
alla
「…の下に」
luona
「…のところに」
付加詞
フィンランド語には,ほかの語の後ろについてちょっとしたニュアンスの変化を表す語がいくつかある。ここでは『フィンランド語文法ハンドブック』にならって付加詞と呼ぶ。語形変化はしない。
- Minäkin asun Helsingissä.
-
Minä=kin
私.nom=も
asu-n
住む-1sg.prs
Helsingi-ssä
ヘルシンキ-ine
- 私もヘルシンキに住んでいます。
例文12の-kinは「…も」の意味をもつ付加詞。
付加詞の例
-ko/kö
疑問の印
-kin
「…も」
-han/hän
明らかなニュアンス
-pa/pä
たとえ…だろうと
接続詞
語と語あるいは文と文などをつなぐ。
- Hän puhuu suomea ja ruotsia.
-
Hän
彼.nom
puhu-u
話す-3sg.prs
suome-a
フィンランド語-prtv
ja
と
ruotsi-a
スウェーデン語-prtv
- 彼はフィンランド語とスウェーデン語を話す。
例文13は,二つの目的語を接続詞でつないだ例。フィンランド語で目的語がとる格はいくつかあるが,ここでは分格が目的語の印になっている。
接続詞の例
ja
「と,そして」
mutta
「しかし」
tai
「か,または」
vaan
「…ではなくて…」
kun
「…するとき」
jotta
「…するように」
jos
「もし…なら」
että
「…ということ」
間投詞
話者の感情や相手への呼びかけを表す語など。資料が足りないので割愛。
参考文献
- 『フィンランド語文法ハンドブック』白水社,2010年,吉田欣吾
- 『フィンランド語トレーニングブック』白水社,2013年,吉田欣吾
- 「Sanaluokka – Wikipedia」2024/08/26閲覧