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言語の比較・対照/そのための多言語学習

グルジア語の《品詞》

 グルジア語の品詞について書く。今回は,参考文献をもとに名詞形容詞代名詞数詞動詞副詞後置詞接続詞助詞間投詞の10個を扱う。

 必要に応じて,グルジア文字をラテン文字化して表記する。詳しくは「グルジア文字のラテン文字化」を参照。

  • 目次-CONTENTS-

グロスと略号

 例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。

1

1人称

2

2人称

3

3人称

advl

様格/副詞格

dat

与格

io

間接目的語

neg

否定

nom

主格

prs

現在

sg

単数

 また,グロス中の数字が略号ではなく語の意味を表す場合は,「3」のように数字にアンダーラインを引いた。

 

名詞

 人・物・抽象的概念など,様々なものの名前を表す。

 グルジア語の名詞には2つの数(単数・複数)と,7つの格(主格・能格・与格・属格・具格・様格・呼格)の変化がある。格変化によっていろいろな役割を持つ。

  1. ქართულს ვსწავლობ.
  1. kartul-s

    グルジア語-dat

    v-scʼavlob

    1sg.prs-勉強する

  1. (私は)グルジア語を勉強しています。

  1. ქართულად ვლაპარაკობ.
  1. kartul-ad

    グルジア語-advl

    v-lapʼarakʼob

    1sg.prs-話す

  1. (私は)グルジア語を話します。

 例えばქართული「グルジア語」という名詞は,例文1では与格の語尾をつけて直接目的語として,例文2では様格の語尾をつけて,「グルジア語で(話す)」という意味で使われている。

名詞の例

კატა(kʼatʼa)

「猫」

მუსიკა(musikʼa)

「音楽」

ძმა(dzma)

「兄弟」

და(da)

「姉妹」

ღამე(ǧame)

「夜」

სახლი(saxli)

「家」

წიგნი(cʼigni)

「本」

ყავა(qʼava)

「コーヒー」

ქართული(kartuli)

「グルジア語」

საქართველო(sakartvelo)

「ジョージア」

 

形容詞

 人や物の属性・性質・状態などを表す。

 形容詞には数の区別はない。格は7つあるが,名詞と比べると変化のパターンは少ない。形容詞は名詞を修飾したり,コピュラとともに述語になるほか,様格の形で副詞として動詞を修飾したりもする。

  1. დიდი სახლი
  1. did-i

    大きい-nom

    saxl-i

    -nom

  1. 大きい

  1. ის კარგად ლაპარაკობს იაპონურად.
  1. is

    .nom

    kʼarg-ad

    良い-advl

    lapʼarakʼob-s

    話す-3sg.prs

    iapʼonur-ad

    日本語-advl

  1. 彼は日本語を上手に話す。

 例文4では,კარგი「良い」という形容詞の様格が「上手に」という意味で使われている。

形容詞の例

დიდი(didi)

「大きい」

პატარა(pʼatʼara)

「小さい」

ცხელი(cxeli)

「熱い」

ცივი(civi)

「冷たい」

თეთრი(tetri)

「白い」

შავი(šavi)

「黒い」

კარგი(kʼargi)

「良い」

ლამაზი(lamazi)

「美しい」

ბედნიერი(bednieri)

「幸せな」

 

代名詞

 ほかの語の代わりをしたり,指示したりする語。

 人称代名詞・指示代名詞・所有代名詞・疑問代名詞・関係代名詞などの種類がある。基本的にはどの代名詞も格変化する。

  1. რას კითხულობ?
  1. ra-s

    -dat

    kʼitxulob

    読む.2sg.prs

  1. (君は)何を読んでいるの?

 例文5では,რა「何」という代名詞の与格が使われている。また,2人称単数の人称代名詞შენ「君」は省略されているが,動詞の活用から主語の人称と数が分かる。

代名詞の例

მე(me)

「私」

შენ(šen)

「君」

ის(is)

「彼,彼女」

რა(ra)

「何」

ვინ(vin)

「誰」

ეს(es)

「これ,この」

ის(is)

「あれ,あの」

ჩემი(čemi)

「私の」

მისი(misi)

「彼の」

 

数詞

 数を表す語。

 基数詞は,名詞を修飾するときには形容詞と同じように格変化し,基数詞と結びつく名詞は常に単数形になる。序数詞は形容詞的に使われるが,პირველი「1番目の」を除いて不変化である。

  1. სამი სახლი
  1. sam-i

    3-nom

    saxl-i

    -sg.nom

  1. 3軒の

  1. მესამე გაკვეთილი
  1. me-sam-e

    序数-3-序数.nom

    gakʼvetil-i

    -nom

  1. 第3

 例文7のმესამე「3番目の」のように,序数詞は基数詞の前後をმე- -ე(me- -e)で挟むのが基本的な作り方。

1から10までの基数詞

1

ერთი(erti)

2

ორი(ori)

3

სამი(sami)

4

ოთხი(otxi)

5

ხუთი(xuti)

6

ექვსი(ekvsi)

7

შვიდი(švidi)

8

რვა(rva)

9

ცხრა(cxra)

10

ათი(ati)

 

動詞

 動作や状態などを表す。

 グルジア語の動詞は法・時制・人称・数などによって活用する。また,動詞が目的語を取るとき,直接目的語・間接目的語に応じた接辞が付く場合がある。これらの活用や接辞は,動詞の語頭や語尾に現れる。

  1. ქართულს ვსწავლობ.
  1. kartul-s

    グルジア語-dat

    v-scʼavlob

    1sg.prs-勉強する

  1. (私は)グルジア語を勉強しています

  1. ყავა მიყვარს.
  1. qʼava

    コーヒー.nom

    m-iqʼvar-s

    io.1sg-好きだ-3sg.prs

  1. 私はコーヒーが好きだ

 例文8は「私」が主語であり,動詞の前に付くვ-(v-)が主語の人称・数に一致している。

 例文9は「コーヒー」が主語,「私」が間接目的語である。動詞の前に付くმ-(m-)は1人称単数の間接目的語を表し、動詞の後に付く-ს(-s)が主語の人称・数を表す。

動詞の例

წერს(cʼers)

「書く」

კითხულობს(kʼitxulobs)

「読む」

ლაპარაკობს(lapʼarakʼobs)

「話す」

ნახავს(naxavs)

「見る」

მღერის(mǧeris)

「歌う」

აკეთებს(akʼetebs)

「する,作る」

სვამს(svams)

「飲む」

სწავლობს(scʼavlobs)

「勉強する」

უყვარს(uqʼvars)

「好きだ」

※すべて主語が3人称・単数の現在形

 

副詞

 様態・程度・場所・時間などを表し,動詞・形容詞・副詞・文などを修飾する語。

  1. დღეს ძალიან ცხელა.
  1. dǧes

    今日

    dzalian

    とても

    cxel-a

    暑い-3sg.prs

  1. 今日はとても暑い。

 例文10ではდღეს「今日」やძალიან「とても」が副詞。ცხელა「暑い」は主語を取らない非人称動詞として使われる。

副詞の例

ძალიან(dzalian)

「とても」

აქ(ak)

「ここに」

სად(sad)

「どこに」

დღეს(dǧes)

「今日」

გუშინ(gušin)

「昨日」

ალბათ(albat)

「たぶん」

 

後置詞

 ほかの語の後ろに置かれて,いろいろな意味を導く。後置詞と結びつく語は,与格・属格・具格・様格などの特定の格になる。また,前の語と続けて書くものと,離して書くものがある。

  1. ის იაპონიაში ცხოვრობს.
  1. is

    .nom

    iapʼonia=ši

    日本=に

    cxovrob-s

    住む-3sg.prs

  1. 彼は日本住んでいる。

 例文11のში「…に」は,名詞の与格について,場所や方向を表す後置詞。スペースを置かず,前の名詞に直接付けられる。

後置詞の例

-დან(-dan)

「…から」

-მდე(-mde)

「…まで」

-ში(-ši)

「…の中に」

-ზე(-ze)

「…の上に」

-თვის(-tvis)

「…のために」

-თან(-tan)

「…のそばに」

გარდა(garda)

「…を除いて」

გარეშე(gareše)

「…なしで」

 

接続詞

 語と語あるいは文と文などをつなぐ。

  1. ქართულს და სომხურს ვსწავლობ.
  1. kartul-s

    グルジア語-dat

    da

    somxur-s

    アルメニア語-dat

    v-scʼavlob

    1sg.prs-勉強する

  1. (私は)グルジア語アルメニア語を勉強しています。

 例文12は二つの直接目的語ქართულს「グルジア語を」とსომხურს「アルメニア語を」を接続詞და「と」でつないだ例。

接続詞の例

და(da)

「と,そして」

ან(an)

「または」

მაგრამ(magram)

「しかし」

როცა(roca)

「…するとき」

თუ(tu)

「もし…なら」

რომ(rom)

「…ということ」

 

助詞

 語形変化がなく,文法的な機能を持つ語。語や文のニュアンスを変えたりするのに使われる。

  1. ყავა არ მიყვარს.
  1. qʼava

    コーヒー.nom

    ar

    neg

    m-iqʼvar-s

    io.1sg-好きだ-3sg.prs

  1. 私はコーヒーが好きではない

 例文13は,例文9を否定文にしたもの。動詞の直前にარ(ar)を置くと否定になる。

助詞の例

არ(ar)

否定

ვერ(ver)

「…できない」

ნუ(nu)

「…するな」

-ო(-o)

引用

-მეთქი(-metki)

自身の発言の引用

-თქო(-tko)

その他の引用

 

間投詞

 話者の感情や,呼びかけなどを表す語。参考文献不足につき,あまり詳しく確認出来ていないものの,例えばუი(ui)やუჰ(uh)などがある。

 

参考文献

 

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