フランス語のコピュラ文「AはBだ」を取り上げる。ここでは動詞êtreを使ってAとBを結び付けた文,いくつかの非人称文,そして強調構文を取り上げる。
- 目次-CONTENTS-
- 更新履歴
- 「#関連記事」に「フランス語の記事リスト」「テーマ《コピュラ文》の記事リスト」へのリンクを追加&不要なリンクを削除
- 参考文献に不備があったので修正(『クラウン仏和辞典 第6版 CD付き』の編者に山田稔さんの名前を追加)
- 「関連記事」の見出しを追加
基本的なしくみ
フランス語で「AはBだ」を表すには,動詞êtreを用いて「A être B」のように言う。êtreは主語の人称・数および法や時制によって活用する。例として,êtreの直説法現在形は以下のようになる。
êtreの直説法現在形
単数 | 複数 | |
---|---|---|
1人称 | suis | sommes |
2人称 | es | êtes |
3人称 | est | sont |
- Je suis Japonais.
- 私は日本人です。
- C'est un médecin.
- あの人は医者です。
- C'est du vin rouge.
- これは赤ワインです。
人が主語で,主語の国籍・職業・身分・資格・宗教などについて述べる場合は,Bにあたる名詞は無冠詞(例文1)。しかし,主語が指示代名詞ceの場合は不定冠詞がいる(例文2)。ただ,冠詞の使い分けはここで述べるには少々複雑なので,また別の機会に書くことにしたい。
指示代名詞ceの後にestが続くと縮約してc'estとなる。
用例
用例をいくつか書いておく。
- Ce sont des graines de coquelicots.
- それはヒナゲシの種だ。
- Tokyo est la capitale du Japon.
- 東京は日本の首都だ。
- Il est toujours jeune.
- 彼はまだ若い。
- L'important est d'attendre patiemment.
- 大事なのは根気強く待つことだ。
- Ils sont de Strasbourg.
- 彼らはストラスブール出身だ。
- Le fait est qu'elle a vingt ans.
- 実は彼女は20歳なのだ。
非人称文
フランス語には形式的な主語ilを使った非人称文がある。このilは具体的な主語がない代わりに形式的に置かれているだけ,または,後に置かれたde+不定詞「~すること」やque~「~ということ」の代わりに主語の位置に置かれているだけで,「彼は,それは」という意味はない。
êtreを使った非人称文には,時間の表現や,「~するのは…だ」「~なのは…だ」のような表現がある。
- Il est huit heures et demie.
- 8時半です。
- Il est tôt pour rentrer.
- 帰るには早い。
- Il est difficile de le convaincre.
- 彼を説得するのは難しい。
- Il est faux qu'elle ait 40 ans.
- 彼女が40歳というのは間違いだ。
メモ
接続詞queや前置詞deの後に母音または無音のhで始まる語が続くときは,それぞれqu',d'となる。
前置詞のdeの後に定冠詞のleが続く場合は縮約してduとなるが,例文12のleは直接補語「彼を」なので縮約しない。
例文13のque以下は接続法。
強調構文
C'est~qui...あるいはC'est~que...で「...なのは~だ」と,C'estの直後に来る要素を強調する文になる。
- C'est moi qui ai perdu la clef.
- 鍵を失くしたのは私だ。
- C'est Marie qu'il aime vraiment.
- 彼が本当に愛しているのはマリーだ。
例文14では「鍵を失くした」の主語である「私」が強調されている。主語を強調する場合はquiを用いる。
一方,例文15では「彼が愛している」の目的語である「マリー」が強調されている。主語以外の要素を強調する場合にはqueを用いる。
その他の場合
ここで取り上げたほかにもêtreには様々な用法がある。例えば,存在「ある,いる」を表したり,複合時制を作る助動詞として用いられたりする。
Nous sommes mardi.「今日は火曜日だ」のような曜日・日付を表す用法は,コピュラ文とは考えづらいので取り上げなかった。
参考文献
- 『クラウン仏和辞典 第6版 CD付き』三省堂,2006年,天羽均,大槻鉄男,佐々木康之,多田道太郎,西川長夫,山田稔,Jean Henri Lamare(編)