スロヴェニア語の品詞について書く。参考文献をもとに,名詞,形容詞,代名詞,数詞,動詞,
- 目次-CONTENTS-
グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
Ø
無語尾
1
1人称
3
3人称
acc
対格
cop
コピュラ
f
女性
gen
属格/生格
intj
間投詞
m
男性
neg
否定
nom
主格
pl
複数
prepl
前置格
prs
現在
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・場所・抽象的概念など,様々なものの名前を表す。
スロヴェニア語の名詞は,男性名詞・女性名詞・中性名詞に分けられる。また,それぞれが三つの数(単数・双数・複数)と,6個の格(主格・生格・与格・対格・前置格・造格)に従って格変化する。主格は主語,対格は直接目的語……など,格変化によっていろいろな役割をする。
- Janez bere časopis.
-
Janez-Ø
ヤネズ-nom
ber-e
読む-3sg.prs
časopis-Ø
新聞-sg.acc
- ヤネズは新聞を読んでいる。
例文1では,Janez「ヤネズ(人名)」とčasopis「新聞」が名詞である。Janezは主格で主語を,časopisは対格で動詞の直接目的語になっている。
名詞の例
učitelj
「先生」
pes
「犬」
časopis
「新聞」
knjiga
「本」
pesem
「歌」
glasba
「音楽」
morje
「海」
meso
「肉」
vreme
「天気」
形容詞
人や物の属性・性質・状態などを表す。
スロヴェニア語の形容詞は,関係する名詞の性・数・格に合わせた語尾がつく。つまり,三つの性(男性・女性・中性),三つの数(単数・双数・複数),6個の格(主格・生格・与格・対格・前置格・造格)に従って格変化する。文中では,修飾語や述語になる。
- lepa glasba
-
lep-a
素敵な-f.sg.nom
glasb-a
音楽(f)-sg.nom
- 素敵な音楽
- Njena glasba je lepa.
-
Njen-a
彼女の-f.sg.nom
glasb-a
音楽(f)-sg.nom
je
cop.3sg.prs
lep-a
素敵な-f.sg.nom
- 彼女の音楽は素敵だ。
例文2,3では,glasba「音楽」(女性名詞・単数・主格)に合わせて,形容詞lep「美しい,素敵な」も女性・単数・主格形になっている。
形容詞の例
lep
「美しい,素敵な」
velik
「大きい」
majhen
「小さい」
nov
「新しい」
star
「古い」
bel
「白い」
črn
「黒い」
desni
「右の」
levi
「左の」
代名詞
ほかの語の代わりになったり,何かを指し示したりする。
細かく分けると,人称代名詞・再帰代名詞・所有代名詞・指示代名詞・疑問代名詞・否定代名詞・不定代名詞などに分類される。名詞の代わりをしたり,形容詞の代わりをしたり,その用法は代名詞の種類によって異なる。格変化するものと,しないものがある。
- Kdo poje?
-
Kdo
誰.nom
poj-e
歌う-3sg.prs
- 誰が歌っているの?
- moja knjiga
-
moj-a
私の-f.sg.nom
knjig-a
本(f)-sg.nom
- 私の本
例文4のkdo「誰」は人を表す名詞の代わりをしていて,主格・主語である。例文5では,moj「私の」が話者の所有を表していて,形容詞のようにknjiga「本」を修飾している(性・数・格の変化がある)。
代名詞の例
jaz
「私」
moj
「私の」
sebe
「自分自身」
ta
「この」
ves
「すべての」
kdo
「誰」
kaj
「何」
nič
「何も…ない」
数詞
基数詞・順序数詞・集合数詞などがある。基数詞や集合数詞は具体的な数を,順序数詞は順番を表す。概ね格変化するが,性や数の変化がなかったり,格変化しない場合もある。
- tri knjige
-
tr-i
3-f.nom
knjig-e
本(f)-pl.nom
- 3冊の本
- tretji človek
-
tretj-i
3番目の-m.sg.nom
človek-Ø
人(m)-sg.nom
- 3番目の人
例文6は基数詞のtri「3」を使った例,例文7は順序数詞のtretji「3番目の」を使った例である。tri「3」には数の区別はないが,それぞれ数詞と名詞の間で性・数・格が一致している。
1から10までの基数詞
1
en
2
dva
3
tri
4
štiri
5
pet
6
šest
7
sedem
8
osem
9
devet
10
deset
動詞
動作や状態などを表す。
スロヴェニア語の動詞には,アスペクト(相)を表す体というカテゴリーがあり,すべての動詞は不完了体・完了体のどちらかまたは両方に属している。中には,基本的な意味が同じで体だけが異なる二つの動詞がペアになっているものもある。
動詞は法・時制・人称・性・数などに従って活用する。
- Janez bere časopis.
-
Janez-Ø
ヤネズ-nom
ber-e
読む-3sg.prs
časopis-Ø
新聞-sg.acc
- ヤネズは新聞を読んでいる。
例文8ではbrati「読む」が,3人称・単数・現在形に活用し,bereとなっている。
動詞の例
brati
「読む」
pisati
「書く」
peti
「歌う」
govoriti
「話す」
jesti
「食べる」
piti
「飲む」
iti
「行く」
hoteti
「ほしい」
副詞
時間・場所・理由・様態などを表し,主に形容詞・動詞・副詞などを修飾する。基本的に語形変化はしないが,一部の副詞には比較級・最上級の変化がある。
- Janez tam bere časopis.
-
Janez-Ø
ヤネズ-nom
tam
そこで
ber-e
読む-3sg.prs
časopis-Ø
新聞-sg.acc
- ヤネズはそこで新聞を読んでいる。
tamは場所を表す副詞で「そこで,そこに」などの意味。
副詞の例
dobro
「よく」
tiho
「静かに」
doma
「家で」
tam
「そこで」
prvič
「初めて」
danes
「今日」
jutri
「明日」
zelo
「とても」
前置詞
特定の格の語と結びついて,場所・方向・位置関係・目的・随伴・譲歩など様々な意味を表す。語形変化はしないが,続く語の語頭の音によって,形が変わるものが若干ある。
- v moji sobi
-
v
…に
moj-i
私の-sg.prepl
sob-i
部屋-sg.prepl
- 私の部屋に
前置詞vは,前置格と結びついて「…(の中)に,で」の意味をもつ。前置格は,必ず前置詞とともに用いられる。
前置詞の例
v
「…(の中)に」
na
「…(の上)に」
z
「…を伴って」
iz
「…から」
pred
「…の前に」
pod
「…の下に」
brez
「…なしで」
blizu
「…の近くに」
接続詞
語と語をつないだり,文と文をつないだりする。語形変化はしない。
- v petek ali soboto
-
v
…に
petek-Ø
金曜日-sg.acc
ali
または
sobot-o
土曜日-sg.acc
- 金曜日か土曜日に
例文11は,v petek「金曜日に」とv soboto「土曜日に」をaliで結びつけて一つにまとめたもの。
接続詞の例
in
「と,そして」
ali
「または」
ampak
「…ではなく」
le
「ただ…」
če
「もし」
da
「…と」
naj
「…するように」
助詞
語や文全体に対してちょっとしたニュアンスの変化を加えたり,話し手の感情・判断などを反映させたりする。語形変化はしない。
指示代名詞にくっついて強調を表す-leなど,ほかの語と一体化して書かれる助詞もいくつかある。
- Ne pijem kave.
-
Ne
neg
pij-em
飲む-1sg.prs
kav-e
コーヒー-sg.gen
- (私は)コーヒーを飲まない。
例文12は,助詞neを使った否定文。
助詞の例
tudi
「…も」
a
疑問の印
ne
否定の印
bi
条件法を作る
samo
「だけ…ない」
-le
強調
間投詞
驚き・感動・嘆き・困惑などの感情や,擬声語,擬音語,呼びかけなどに使う語が属する。
- O, kako lepa glasba!
-
O
intj
kako
なんと
lep-a
素敵な-f.sg.nom
glasb-a
音楽(f)-sg.nom
- おお,なんと素敵な音楽だろう!
語例は省略。
参考文献
- 『スロヴェニア語文法』三修社,2022年,金指久美子