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セルビア語の《品詞》

 セルビア語の品詞について書く。各種参考文献・サイトをもとに,名詞形容詞代名詞数詞動詞副詞前置詞接続詞助詞間投詞の10個を扱う。

 必要に応じて,キリル文字をラテン文字に翻字する。詳しくは「キリル文字のラテン文字化」を参照。

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グロスと略号

 例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。

Ø

無語尾

1

1人称

3

3人称

acc

対格

cop

コピュラ

f

女性

gen

属格/生格

m

男性

n

中性

neg

否定

nom

主格

prs

現在

sg

単数

 また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。

 

名詞

 人や物の名前を表す。

 セルビア語の名詞は,男性名詞・女性名詞・中性名詞に分けられる。また,二つの数(単数・複数)と,7個の格(主格・生格・与格・対格・呼格・造格・前置格)に従って格変化する。主格なら主語,生格なら所有や限定,対格なら直接目的語……といったように,格変化に応じて様々な役割をする。

  1. Душан чита часопис.
  1. Dušan-Ø

    ドゥシャン-nom

    čita-Ø

    読む-3sg.prs

    časopis-Ø

    雑誌-sg.acc

  1. ドゥシャンは雑誌を読んでいる。

 例文1では人名のДушан「ドゥシャン」と,часопис「雑誌」が名詞である。Душанは主格で主語として,часописは対格で直接目的語として用いられている。

名詞の例

студент(student)

「学生」

отац(otac)

「父」

часопис(časopis)

「新聞」

торба(torba)

「かばん」

кост(kost)

「骨」

риба(riba)

「魚」

море(more)

「海」

дете(dete)

「子供」

време(vreme)

「時間」

 

形容詞

 形容詞は,名詞の性・数・格に合わせて変化する。つまり,三つの性・二つの数・7個の格による変化がある。名詞を修飾したり,コピュラと共に述語として使われる。

  1. леп град
  1. lep-Ø

    美しい-m.sg.nom

    grad-Ø

    (m)-sg.nom

  1. 美しい

  1. Овај град је леп.
  1. Ov-aj

    この-m.sg.nom

    grad-Ø

    (m)-sg.nom

    je

    cop.3sg.prs

    lep-Ø

    美しい-m.sg.nom

  1. この街は美しい

 例文2は名詞を限定している例で,例文3はコピュラとともに述語になった例。град「街」が男性名詞・単数・主格なので,леп「美しい」も男性・単数・主格形になっている。

形容詞の例

леп(lep)

「美しい,素敵な」

нов(nov)

「新しい」

стар(star)

「古い」

велик(velik)

「大きい」

мал(mal)

「小さい」

бео(beo)

「白い」

црн(crn)

「黒い」

главни(glavni)

「主な」

 

代名詞

 ほかの語の代わりをしたり,何かを指し示したりする。

 人称代名詞・再帰代名詞・所有代名詞・指示代名詞・疑問代名詞などいろいろな種類がある。基本的にどれも格変化し,名詞的な働きをしたり,形容詞的な働きをしたりする。

  1. Шта је ово?
  1. Šta

    .nom

    je

    cop.3sg.prs

    ov-o

    これ-n.sg.nom

  1. これはですか?

  1. моја торба
  1. moj-a

    私の-f.sg.nom

    torb-a

    かばん(f)-sg.nom

  1. 私のかばん

 例文3の疑問代名詞шта「何」や,指示代名詞ово「これ」(овај「この」の中性形)は,ここでは名詞的な働きをしている。мој「私の」は形容詞と同じ変化で,торба「かばん」(女性名詞・単数・主格)に合わせて格変化している。

代名詞の例

ја(ja)

「私」

мој(moj)

「私の」

овај(ovaj)

「この」

шта(šta)

「何」

ко(ko)

「誰」

нешто(nešto)

「何か」

неко(neko)

「誰か」

 

数詞

 基数詞・順序数詞・集合数詞などの種類がある。基数詞や集合数詞はものの数を表し,順序数詞は順序を表す。格変化するものとしないものがある。

  1. три књиге
  1. tr-i

    3-nom

    knjig-e

    -sg.gen

  1. 3冊の

  1. трећа књига
  1. treć-a

    3番目の-f.sg.nom

    knjig-a

    (f)-sg.nom

  1. 3番目の

 例文6の基数詞три「3」は,主格のとき,名詞の単数・生格形と結びつくという規則がある。例文7の順序数詞трећи「3番目の」は,књига「本」(女性名詞・単数・主格)に合わせて,形容詞と同じように格変化している。

1から10までの基数詞

1

један(jedan)

2

два(dva)

3

три(tri)

4

четири(četiri)

5

пет(pet)

6

шест(šest)

7

седам(sedam)

8

осам(osam)

9

девет(devet)

10

десет(deset)

 

動詞

 動作や状態などを表す。

 セルビア語の動詞には,アスペクト(相)を表すというカテゴリーがあり,すべての動詞は不完了体・完了体のどちらかまたは両方に属している。一部の動詞は,不完了体と完了体がひとつの組になっている。

 動詞は,法・時制・人称・性・数などによって活用する。

  1. Душан чита часопис.
  1. Dušan-Ø

    ドゥシャン-nom

    čita-Ø

    読む-3sg.prs

    časopis-Ø

    雑誌-sg.acc

  1. ドゥシャンは雑誌を読んでいる

 例文8ではчитати「読む」の3人称・単数・現在形читаが使われている。

動詞の例

читати(čitati)

「読む」

писати(pisati)

「書く」

јести(jesti)

「食べる」

пити(piti)

「飲む」

говорити(govoriti)

「話す」

знати(znati)

「知っている」

питати(pitati)

「尋ねる」

хтети(hteti)

「ほしい」

 

副詞

 様態・程度・時間・場所などを表し,形容詞・動詞・副詞などを修飾する。基本的に語形変化はしない。

  1. Душан сада чита часопис.
  1. Dušan-Ø

    ドゥシャン-nom

    sada

    čita-Ø

    読む-3sg.prs

    časopis-Ø

    雑誌-sg.acc

  1. ドゥシャンは雑誌を読んでいる。

 сада「今」は時間を表す副詞。

副詞の例

добро(dobro)

「良く」

лепо(lepo)

「きれいに」

сада(sada)

「今」

данас(danas)

「今日」

често(često)

「しばしば」

једном(jednom)

「一度」

прво(prvo)

「初めて」

овде(ovde)

「ここで」

врло(vrlo)

「とても」

 

前置詞

 特定の格の語と結びついて,場所・方向・経路・目的・随伴など様々な意味を導く。語形変化はしないが,続く語の発音によっては,形が変わることがある。

  1. близу мора
  1. blizu

    …の近くに

    mor-a

    -sg.gen

  1. の近くに

 близуは,生格の名詞と結びついて「…の近くに」という意味を表す。

前置詞の例

у(u)

「…(の中)に」

на(na)

「…(の上)に」

из(iz)

「…から」

близу(blizu)

「…の近くに」

код(kod)

「…のところで」

међу(među)

「…の間に」

за(za)

「…の後ろに」

с(s)

「…とともに」

 

接続詞

 語と語,文と文などをつなぐ。語形変化はしない。

  1. у четвртак и петак
  1. u

    …に

    četvrtak-Ø

    木曜日-sg.acc

    i

    petak-Ø

    金曜日-sg.acc

  1. 木曜日金曜日に

 例文11は,у четвртак「木曜日に」とу петак「金曜日に」をи「と」でつないだ例。

接続詞の例

и(i)

「と,そして」

или(ili)

「か,または」

али(ali)

「でも,しかし」

да(da)

「…すること」

него(nego)

「…より」

кад(kad)

「…するとき」

 

助詞

 肯定・否定・疑問・限定・強調など,語や文のニュアンスを少し変える役割をする。

  1. Ја не пијем пиво.
  1. Ja

    .nom

    ne

    neg

    pije-m

    飲む-1sg.prs

    piv-o

    ビール-sg.acc

  1. 私はビールを飲まない

 否定を表す助詞неを使った例。

助詞の例

да(da)

「はい」

не(ne)

「いいえ」,否定の印

ли(li)

疑問の印

само(samo)

「…だけ」

сигурно(sigurno)

「きっと」

нека(neka)

「…させる」

 

間投詞

 話者の感情や,相手への呼びかけ・挨拶,擬声語・擬音語など。Wikipediaセルビア語版のузвик「間投詞」のページ,「Узвик — Википедија」には,ах, јао, хај, а, о, ојなどが挙げられている。

 非常に大変なので,語例・例文は省略。

 

参考文献

 

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