スロヴァキア語の品詞について書く。参考文献をもとに,名詞,形容詞,代名詞,数詞,動詞,副詞,前置詞,接続詞,助詞,間投詞の10個を扱う。
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グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
Ø
無語尾
2
2人称
3
3人称
acc
対格
cop
コピュラ
f
女性
inan
不活動体
inst
具格/造格
m
男性
n
中性
neg
否定
nom
主格
part
助詞
pl
複数
prepl
前置格
prs
現在
ptcp
分詞
sbjv
仮定法
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・場所・抽象的概念など,様々なものの名前を表す。
スロヴァキア語の名詞は,男性名詞・女性名詞・中性名詞に分けられる。また,二つの数(単数・複数)と,6個の格(主格・生格・与格・対格・前置格・造格)に従って格変化する。格変化によって,文中での様々な役割(主語・目的語・状況語など)を表す。
- Michal číta časopis.
-
Michal-Ø
ミハル-nom
číta-Ø
読む-3sg.prs
časopis-Ø
雑誌-sg.acc
- ミハルは雑誌を読んでいる。
例文1では,人名のMichal「ミハル」やčasopis「雑誌」が名詞である。Michalは主格で主語として,časopisは対格で動詞の直接目的語になっている。
名詞の例
učiteľ
「先生」
ryba
「魚」
víno
「ワイン」
časopis
「雑誌」
rieka
「川」
piatok
「金曜日」
noc
「夜」
peniaze
「お金」
hudba
「音楽」
sloboda
「自由」
形容詞
人や物の属性・性質などを表す。
形容詞は,主語・述語・補語として使われる。どんな場合でも,関係する名詞の性・数・格に合わせて変化する。
- krásna hudba
-
krásn-a
美しい-f.sg.nom
hudb-a
音楽(f)-sg.nom
- 美しい音楽
- Jeho hudba je krásna.
-
Jeho
彼の
hudb-a
音楽(f)-sg.nom
je
cop.3sg.prs
krásn-a
美しい-f.sg.nom
- 彼の音楽は美しい。
例文2は名詞の前に置かれて修飾語になり,例文3ではコピュラとともに述語になっている。どちらの場合でも,hudba「音楽」が女性名詞・単数・主格なので,形容詞krásnyも女性・単数・主格形になっている。
形容詞の例
nový
「新しい」
starý
「古い」
veľký
「大きい」
malý
「小さい」
krásny
「美しい」
čierny
「黒い」
biely
「白い」
hlavný
「主な」
slovenský
「スロヴァキアの」
český
「チェコの」
代名詞
ほかの語の代わりになったり,何かを指し示したりする。
用法によって,人称代名詞・再帰代名詞・所有代名詞・指示代名詞・疑問代名詞・定代名詞・不定代名詞などの種類がある。名詞的な格変化・用法をもつものもあれば,形容詞的な格変化・用法をもつものもある。
- Čo čítaš?
-
Čo
何.acc
číta-š
読む-2sg.prs
- (あなたは)何を読んでいるの?
- moje peniaze
-
moj-e
私の-m.inan.pl.nom
peniaz-e
お金(m.inan)-pl.nom
- 私のお金
例文4の疑問代名詞čo「何」は対格で,動詞の直接目的語になっている。例文5ではmôj「私の」が形容詞のように名詞を修飾し,性・数・格も名詞に一致している。スロヴァキア語では,形容詞や代名詞の格変化で男性名詞の活動体(生きているもの)と不活動体(生きていないもの)を区別することがあり,例文5でもこの区別が反映されている。
代名詞の例
ja
「私」
môj
「私の」
seba
「自分自身」
ten
「その」
čo
「何」
kto
「誰」
všetok
「すべての」
ktorý
「どの」
数詞
個数詞・集合数詞・順序数詞などいろいろな種類がある。格変化するものとしないものがあり,名詞・形容詞・副詞など,様々な品詞の特徴を持つ。
- tri knihy
-
tr-i
3-f.nom
knih-y
本(f)-pl.nom
- 3冊の本
- tretia kniha
-
tret-ia
3番目の-f.sg.nom
knih-a
本(f)-sg.nom
- 3番目の本
例文6は個数詞の例。例文7は順序数詞の例で,順序数詞は形容詞的な変化をするので,名詞と性・数・格が一致している。
1から10までの個数詞
1
jeden
2
dva
3
tri
4
štyri
5
päť
6
šesť
7
sedem
8
osem
9
deväť
10
desať
動詞
動作や状態などを表す。
スロヴァキア語の動詞には,アスペクトを表す体と呼ばれる文法カテゴリーがあり,すべての動詞は不完了体・完了体のどちらかまたは両方に属している。多くの場合,同じ意味の動詞に対して,不完了体と完了体がペアになっている。例えば,čítať「読む」(不完了体)とprečítať(完了体)など。
動詞は,法・時制・人称・性・数などに従って活用する。
- Michal číta časopis.
-
Michal-Ø
ミハル-nom
číta-Ø
読む-3sg.prs
časopis-Ø
雑誌-sg.acc
- ミハルは雑誌を読んでいる。
例文8では,主語がMichal「ミハル」(3人称・単数)で現在のことを表しているので,動詞は3人称・単数・現在形に活用している。
動詞の例
čítať
「読む」
písať
「書く」
jesť
「食べる」
piť
「飲む」
hovoriť
「話す」
ísť
「行く」
hrať
「遊ぶ」
chcieť
「ほしい」
副詞
ほかの語を修飾する。基本的には語形変化しないが,形容詞から派生した一部の副詞には比較級・最上級がある。
- Michal číta ticho časopis.
-
Michal-Ø
ミハル-nom
číta-Ø
読む-3sg.prs
ticho
静かに
časopis-Ø
雑誌-sg.acc
- ミハルは静かに雑誌を読んでいる。
副詞の例
dobre
「上手に」
ticho
「静かに」
ľahko
「簡単に」
vždy
「いつも」
dnes
「今日」
tam
「そこに」
vonku
「外に」
veľmi
「とても」
前置詞
特定の格の語と結びついて,様々な意味を導く。語形変化はしないが,特定の子音連続を避けるため,結びつく語によっては少し形が変わることがある。
- na stole
-
na
…の上に
stol-e
机-sg.prepl
- 机の上に
前置詞naは前置格の名詞と結びついて「…(の上)に」などの意味を表す。前置格は常に前置詞と結びついて用いられる格である。
前置詞の例
v
「…(の中)に」
na
「…(の上)に」
s
「…とともに」
bez
「…なしの」
do
「…へ」
o
「…について」
pred
「…の前に」
u
「…のもとで」
接続詞
語と語あるいは文と文などを結びつけたり,節を導いたりする。語形変化はしない。
- medzi letom a zimou
-
medzi
…の間に
let-om
夏-sg.inst
a
と
zim-ou
冬-sg.inst
- 夏と冬の間に
接続詞の例
a
「と,そして」
ale
「しかし」
aby
「…するように」
než
「…より」
keby
「もし…」
že
「…ということ」
助詞
文の内容に対する話し手の態度・判断などを表す。語形変化はしない。
- Bodaj by zajtra nepršalo!
-
Bodaj
part
by
sbjv
zajtra
明日
ne-prša-lo
neg-雨が降る-n.sg.ptcp
- 明日雨が降りませんように!
例文12では,bodajは願望を表す文を導く助詞,byは仮定法を作る助詞である。bodajは,仮定法と合わせて願望を表す。
助詞の例
áno
「はい」
nie
「いいえ」
by
仮定法を作る
nech
3人称命令を作る
dokonca
…さえ
len
ただ…だけ
間投詞
話し手の感情・意志を表す語や,擬音語・擬声語が含まれる。
- Ach, jeho hudba je krásna.
-
Ach
intj
jeho
彼の
hudb-a
音楽(f)-sg.nom
je
cop.3sg.prs
krásn-a
美しい-f.sg.nom
- ああ,彼の音楽は美しい。
語例は割愛。
参考文献
- 『スロヴァキア語文法』大学書林,2004年,長與進