チェコ語の品詞について書く。ここでは,各参考文献をもとに,名詞,形容詞,代名詞,数詞,動詞,副詞,前置詞,接続詞,助詞,間投詞の10個を扱う。
- 目次-CONTENTS-
グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
Ø
無語尾
2
2人称
3
3人称
acc
対格
cop
コピュラ
f
女性
fut
未来
inan
不活動体
inf
不定形
inst
具格/造格
intj
間投詞
m
男性
nom
主格
pl
複数
prepl
前置格
prs
現在
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・場所・抽象的概念など,様々なものの名前を示す。
チェコ語の名詞は,男性名詞・女性名詞・中性名詞に分けられる。また,二つの数(単数・複数)と,7個の格(主格・生格・与格・対格・呼格・前置格・造格)に従って格変化する。格変化によって,主語・目的語・状況語など様々な役割をする。
- Petr čte časopis.
-
Petr-Ø
ペトル-nom
čt-e
読む-3sg.prs
časopis-Ø
雑誌-sg.acc
- ペトルは雑誌を読んでいる。
例文1ではčasopis「雑誌」およびPetr「ペトル」が名詞で,časopisは単数・対格で動詞の直接目的語として,Petrは主格で主語として用いられている。
名詞の例
učitel
「先生」
ryba
「魚」
víno
「ワイン」
časopis
「雑誌」
řeka
「川」
pátek
「金曜日」
noc
「夜」
peníze
「お金」
hudba
「音楽」
svoboda
「自由」
形容詞
人や物の属性・性質・状態などを表す。
形容詞は,主語・述語のほか,主語や目的語について補足する補語としても使われる。関係する名詞の性・数・格に一致するように格変化するが呼格は常に主格と同じ。
- krásná hudba
-
krásn-á
美しい-f.sg.nom
hudb-a
音楽(f)-sg.nom
- 美しい音楽
- Jeho hudba je krásná.
-
Jeho
彼の
hudb-a
音楽(f)-sg.nom
je
cop.3sg.prs
krásn-á
美しい-f.sg.nom
- 彼の音楽は美しい。
例文2のように名詞を修飾するときも,例文3のように述語として使われるときも,形容詞krásný「美しい」は名詞に一致するように格変化している。今回は女性・単数・主格。
形容詞の例
nový
「新しい」
starý
「古い」
velký
「大きい」
malý
「小さい」
krásný
「美しい」
černý
「黒い」
bílý
「白い」
hlavný
「主な」
český
「チェコの」
slovenský
「スロヴァキアの」
代名詞
人や物などを表す様々な語の代わりをしたり,何かを指示したりする。
用法によって,人称代名詞・再帰代名詞・疑問代名詞・指示代名詞・所有代名詞・不定代名詞・否定代名詞・関係代名詞などの種類がある。人称代名詞や疑問代名詞などは名詞に近い働きを,指示代名詞や所有代名詞などは形容詞に近い働きをする。
- Co čteš?
-
Co
何.acc
čt-eš
読む-2sg.prs
- (あなたは)何を読んでいるの?
- moje peníze
-
moj-e
私の-m.inan.pl.nom
peníz-e
お金(m.inan)-pl.nom
- 私のお金
例文4は,名詞的な働きをする疑問代名詞のco「何」が直接目的語になっている例である。例文5は,形容詞的な働きをするmůj「私の」が,peníze「お金」に一致するように格変化している。チェコ語では形容詞や代名詞の男性・複数・主格形に活動体(生きているもの)と不活動体(生きていないもの)の区別があり,例文5でもこの区別が語尾に反映されている。
代名詞の例
já
「私」
můj
「私の」
sebe
「自分自身」
ten
「その」
co
「何」
kdo
「誰」
všechen
「すべての」
který
「どの」
数詞
基数詞・順序数詞・集合数詞などの種類がある。個数詞や集合数詞は数を表すが,順序数詞は順序を表す。いずれも格変化する。
- tři knihy
-
tř-i
3.nom
knih-y
本-pl.nom
- 3冊の本
- třetí kniha
-
třet-í
3番目の-f.sg.nom
knih-a
本(f)-sg.nom
- 3番目の本
例文6は基数詞のtři「3」と名詞の複数・主格の組み合わせ。例文7は,順序数詞třetí「3番目の」が,形容詞的に用いられた例で,性・数・格が名詞と一致している。
1から10までの基数詞
1
jeden
2
dva
3
tři
4
čtyři
5
pět
6
šest
7
sedm
8
osm
9
devět
10
deset
動詞
動作や状態などを表す。
チェコ語の動詞には,アスペクト(相)を表す体というカテゴリーが存在し,すべての動詞は不完了体か完了体のどちらかまたは両方に属す。そして,多くの場合,意味が同じで体だけが異なる二つの動詞がペアになっている。例えばčíst「読む(不完了体)」とpřečíst「読む(完了体)」など。
動詞は,法・時制・人称・性・数などによって活用する。
- Petr čte časopis.
-
Petr-Ø
ペトル-nom
čt-e
読む-3sg.prs
časopis-Ø
雑誌-sg.acc
- ペトルは雑誌を読んでいる。
例文8は,主語のPetr「ペトル」が3人称・単数で,現在のことを表しているので,動詞に「3人称・単数・現在」の語尾がついている。
動詞の例
číst
「読む」
psát
「書く」
jíst
「食べる」
pít
「飲む」
mluvit
「話す」
jít
「行く」
hrát
「遊ぶ」
chtít
「ほしい」
副詞
ほかの語や文そのものを修飾する。基本的に語形変化はしないが,いくつかの形容詞には比較級・最上級がある。
- Petr čte tiše časopis.
-
Petr-Ø
ペトル.nom
čt-e
読む-3sg.prs
tiše
静かに
časopis-Ø
雑誌-sg.acc
- ペトルは静かに雑誌を読んでいる。
例文9では,tiše「静かに」がčte「読んでいる」を修飾している。
副詞の例
dobře
「上手に」
tiše
「静かに」
vždy
「いつも」
dnes
「今日」
tam
「そこに」
kde
「どこに」
jak
「どのように」
česky
「チェコ語で」
前置詞
特定の格の語と結びついて,様々な表現を導く。語形変化はしない。
- na stole
-
na
…の上に
stol-e
机-sg.prepl
- 机の上に
ここでは前置詞naが,前置格の名詞と結びついて「…の上に」を表している。前置詞の意味は結びつく格によって変わる。
前置詞の例
v
「…(の中)に」
na
「…(の上)に」
s
「…とともに」
bez
「…なしの」
do
「…へ」
o
「…について」
před
「…の前に」
u
「…のそばで」
接続詞
語や文をつないだり,節を作ったりする。基本的には語形変化しない。ただし,kdyby(kdybych, kdybys...)のように,býtの条件法と一体化してまるで活用しているように見えるものもある。
- mezi létem a zimou
-
mezi
…の間に
lét-em
夏-sg.inst
a
と
zim-ou
冬-sg.inst
- 夏と冬の間に
接続詞の例
a
「と,そして」
ale
「しかし」
aby
「…するように」
jak
「…のように」
jestli
「もし」
že
「…ということ」
助詞
文の内容に対する話し手の態度・判断などを表す。語形変化はしない。
- Zítra bude asi pršet.
-
Zítra
明日
bude
cop.3sg.fut
asi
たぶん
prše-t
雨が降る-inf
- 明日はたぶん雨が降るだろう。
例文12は動詞の未来形と,助詞asi「たぶん」を組み合わせて,不確定な未来について話している。
助詞の例
ano
「はい」
ne
「いいえ」
asi
「たぶん」
prý
「…だそうだ」
kéž
願望文を導く
ať
3人称命令を作る
間投詞
話し手の感情・意志を表す語や,擬音語・擬声語などが含まれる。
- Ach, jeho hudba je krásná!
-
Ach
intj
jeho
彼の
hudb-a
音楽(f)-sg.nom
je
cop.3sg.prs
krásn-á
美しい-f.sg.nom
- ああ,彼の音楽は美しい!
語例は割愛。
参考文献
- 『ニューエクスプレス チェコ語(CD付)』白水社,2007年,保川亜矢子
- 『中級チェコ語文法』白水社,2010年,金指久美子