ポーランド語の品詞について書く。今回は,各種参考文献を参考に,名詞,形容詞,代名詞,動詞,数詞,副詞,前置詞,接続詞,助詞,間投詞の10個を扱う。
- 目次-CONTENTS-
グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
Ø
無語尾
1
1人称
2
2人称
3
3人称
acc
対格
cop
コピュラ
f
女性
intj
間投詞
m
男性
n
中性
nom
主格
pers
人間
pl
複数
prepl
前置格
prs
現在
q
疑問
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・場所・抽象的概念など,様々なものの名前を表す。
ポーランド語の名詞は,文法性によって男性名詞・女性名詞・中性名詞に分けられる。また,二つの数(単数・複数)と,7個の格(主格・生格・与格・対格・造格・前置格・呼格)に従って格変化する。格変化によって,文中で様々な働きをする。
- Antoni czyta gazetę
-
Antoni
アントニ:nom
czyta-Ø
読む-3sg.prs
gazet-ę
新聞-sg.acc
- アントニは新聞を読んでいる。
例文1では,人名を表すAntoniは主格で,主語を表している。一方,gazetęは対格で,動詞の直接目的語になっている。
名詞の例
lekarz
「医者」
pies
「犬」
mleko
「牛乳」
gazeta
「新聞」
śnieg
「雪」
zima
「冬」
muzyka
「音楽」
imię
「名前」
形容詞
人や物の属性・性質・状態などを表す。
ポーランド語の形容詞は,単数形では三つの性(男性・女性・中性)を区別し,複数形では,男性人間と非男性人間を区別する。また6個の格(主格・生格・与格・対格・造格・前置格)に従って格変化する。
形容詞は述語または修飾語として使われ,どちらの場合でも,名詞の性・数・格に一致する。
- duże okno
-
duż-e
大きい-n.sg.nom
okn-o
窓(n)-sg.nom
- 大きい窓
- To okno jest duże.
-
T-o
この-n.sg.nom
okn-o
窓(n)-sg.nom
jest
cop.3sg.prs
duż-e
大きい-n.sg.nom
- この窓は大きい。
例文2,3はokno「窓」が中性名詞・単数・主格なので,duży「大きい」が中性・単数・主格形になっている。
形容詞の例
duży
「大きい」
mały
「小さい」
młody
「若い」
stary
「年取った」
biały
「白い」
czarny
「黒い」
polski
「ポーランドの」
japoński
「日本の」
代名詞
人や物などの表す語の代わりをしたり,何かを指し示したりする。
用法によって,人称代名詞・再帰代名詞・所有代名詞・指示代名詞・疑問代名詞・定代名詞・不定代名詞・否定代名詞・関係代名詞などの種類がある。名詞に近い格変化をするものと,形容詞に近い格変化をするものがある。文中での役割も,名詞に近いものと形容詞に近いものにだいたい分けられる。
- Co czytasz?
-
Co
何.acc
czyta-sz
読む-2sg.prs
- (あなたは)何を読んでいるの?
- moja gazeta
-
moj-a
私のf.sg.nom
gazet-a
新聞(f)-sg.nom
- 私の新聞
例文4のco「何」(単数・対格)は名詞的な代名詞で,動詞の直接目的語として用いられている。例文5のmoja「私の」(女性・単数・主格)は形容詞的な代名詞で,ここではgazeta「新聞」に合わせて格変化している。
代名詞の例
ja
「私」
mój
「私の」
siebie
「自身」
ten
「この」
kto
「誰」
co
「何」
coś
「何か」
nic
「何も…ない」
動詞
動作や状態を表す。
ポーランド語の動詞には,アスペクト(相)を表す体というカテゴリーが存在し,すべての動詞は不完了体か完了体のどちらかまたは両方に属す。そして多くの場合は,意味が同じで体が異なる動詞が,不完了体と完了体でペアを作っている。例えば,czytać「読む(不完了体)」とprzeczytać「読む(完了体)」など。
動詞は,法・時制・人称・性・数などによって活用する。
- Antoni czyta gazetę.
-
Antoni
アントニ:nom
czyta-Ø
読む-3sg.prs
gazet-ę
新聞-sg.acc
- アントニは新聞を読んでいる。
例文6のczytaは無語尾だが,これで3人称・単数・現在を表している。
動詞の例
czytać
「読む」
pisać
「書く」
jeść
「食べる」
pić
「飲む」
iść
「行く」
słyszeć
「聞こえる」
mówić
「話す」
znać
「知っている」
数詞
個数詞・順序数詞・集合数詞などの種類がある。個数詞と集合数詞は人や物の数を表し,順序数詞はその名の通り順序を表す。いずれも格変化する。
- trzej Polacy
-
trz-ej
3-m.pers.nom
Polac-y
ポーランド人(m.pers)-pl.nom
- 3人のポーランド人
- lekcja trzecia
-
lekcj-a
課(f)-sg.nom
trzeci-a
3番目の-f.sg.nom
- 第3課
例文7は個数詞の「3」,例文8は順序数詞の「3番目」。
1から10までの個数詞
1
jeden
2
dwa
3
trzy
4
cztery
5
pięć
6
sześć
7
siedem
8
osiem
9
dziewięć
10
dziesięć
副詞
動詞・形容詞・副詞などを修飾する。基本的に語形変化しないが,形容詞から派生した一部の副詞には比較級・最上級がある。
- Codziennie czytam gazety.
-
Codziennie
毎日
czyta-m
読む-1sg.prs
gazet-y
新聞-pl.acc
- (私は)毎日新聞を読む。
例文9では,codziennie「毎日」がczytam「読んでいる」を修飾している。「毎日新聞」を読んでいるわけではない(書いてから気づいた)。
副詞の例
dobrze
「上手に」
cicho
「静かに」
zawsze
「いつも」
dziś
「今日」
tam
「あそこに」
gdzie
「どこに」
bardzo
「とても」
jak
「どのように」
前置詞
名詞などの前に置いて,場所・方向・位置関係・付随・起点・目的など,様々な表現を導く。前置詞と結びつく名詞は,意味によって特定の格になる。語形変化はしないが,後に続く音によっては,前置詞の形が少し変わることがある。
- opowieść o muzyce
-
opowieść
話
o
…について
muzyc-e
音楽-sg.prepl
- 音楽についての話
o「…について」は,前置格の名詞と結びつく。前置格は,単独では使われず,常に前置詞と結びついて使われる格。
前置詞の例
w
「…(の中)に」
na
「…(の上)に」
od
「…から」
do
「…まで」
przed
「…の前に」
za
「…の後ろに」
o
「…について」
u
「…のところに」
接続詞
語や文をつないだり,節を作ったりする。基本的に語形変化はしない。ただし,一部の接続詞は,語形変化する助詞byと結合して1語のようになる(aby, gdybyなど)。
- we wtorek i środę
-
we
に
wtorek-Ø
火曜日-sg.acc
i
と
środ-ę
水曜日-sg.acc
- 火曜日と水曜日に
接続詞の例
i
「と,そして」
ale
「しかし」
lub
「か,または」
aby
「…するように」
gdy
「…するとき」
gdyby
「もし…なら」
że
「…ということ」
jak
「…のように」
助詞
語・句・文などに掛かっていろいろな関係を表したり,話者の判断などを表したりする。基本的に語形変化しない。ただし,仮定法を作るbyは人称・数によって語形変化し,動詞の過去形・接続詞・助詞などに続けて1語のように綴られる。
- Czy lubisz wino?
-
Czy
q
lub-isz
好む-2sg.prs
win-o
ワイン-sg.acc
- (あなたは)ワインが好きですか?
czyは疑問文を導く助詞。
助詞の例
czy
疑問の印
nie
否定の印
by
仮定法を作る
nawet
…でさえ
już
もう,すでに
niech
3人称命令を作る
間投詞
驚き,納得,感動,確認などの反応を表す語や,呼びかけ,相手への応答などに使う語。
- Ach, jaki piękny głos!
-
Ach
intj
jak-i
なんと-m.sg.nom
piękn-y
美しい-m.sg.nom
głos-Ø
声(m)-sg.nom
- あぁ,なんて美しい声…!
語例は割愛。
参考文献
- 『ニューエクスプレス ポーランド語(CD付)』白水社,2008年,石井哲士朗,三井レナータ
- 『明解ポーランド語文法[新版]』白水社,2023年,石井哲士朗