ウクライナ語の品詞について書く。今回は各種参考文献・サイトを参考に,名詞,形容詞,代名詞,動詞,数詞,副詞,述語副詞,前置詞,接続詞,助詞,間投詞の11個を扱う。
必要に応じて,キリル文字をラテン文字化して表記する。詳しくは「キリル文字のラテン文字化」を参照。
- 目次-CONTENTS-
グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
3
3人称
acc
対格
f
女性
inst
具格/造格
intj
間投詞
neg
否定
nom
主格
pl
複数
prs
現在
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・場所・抽象的概念など,いろいろなものの名前を表す。
ウクライナ語の名詞は,男性名詞・女性名詞・中性名詞に分けられる。また,二つの数(単数・複数)と,7個の格(主格・生格・与格・対格・造格・前置格・呼格)に従って格変化する。格変化によって,主語・目的語・修飾語など,様々な働きをする。
- Він читає газету.
-
Vin
彼.nom
čyta-je
読む-3sg.prs
hazet-u
新聞-sg.acc
- 彼は新聞を読んでいる。
例文1では,газета「新聞」が対格に変化して,動詞の直接目的語になっている。
名詞の例
батько(batʹko)
「父」
собака(sobaka)
「犬」
хліб(xlib)
「パン」
газета(hazeta)
「新聞」
море(more)
「海」
школа(škola)
「学校」
музика(muzyka)
「音楽」
тиждень(tyždenʹ)
「週」
形容詞
人や物の属性・性質・状態などを表す。
ウクライナ語の形容詞は,三つの性(男性・女性・中性),二つの数(単数・複数),6個の格(主格・生格・与格・対格・造格・前置格)に従って格変化する。形容詞は修飾語または述語として用いられ,どちらの場合でも,関係する名詞の性・数・格に一致する。
- цікава книга
-
cikav-a
面白い-f.sg.nom
knyh-a
本(f)-sg.nom
- 面白い本
- Ця книга цікава.
-
C-ja
この-f.sg.nom
knyh-a
本(f)-sg.nom
cikav-a
面白い-f.sg.nom
- この本は面白い。
例文2は修飾語として,例文3は述語として用いられた例。どちらの場合でも,цікавий「面白い」が,книга「本」(女性名詞・単数・主格)に一致するように格変化している。
形容詞の例
великий(velykyj)
「大きい」
маленький(malenʹkyj)
「小さい」
високий(vysokyj)
「高い」
низький(nyzʹkyj)
「低い」
білий(bilyj)
「白い」
чорний(čornyj)
「黒い」
цікавий(cikavyj)
「面白い」
японський(japonsʹkyj)
「日本の」
代名詞
人や物などを表す名詞の代わりをしたり,何かを指し示す語。
用法によって人称代名詞・再帰代名詞・所有代名詞・指示代名詞・疑問代名詞・関係代名詞など,様々な種類がある。それぞれ,性・数・格の全部または一部に従って格変化する。名詞に近い働きをしたり,形容詞のように名詞を修飾したりするものもある。
- Він читає газету.
-
Vin
彼.nom
čyta-je
読む-3sg.prs
hazet-u
新聞-sg.acc
- 彼は新聞を読んでいる。
例文4ではвін「彼」が主格で主語として使われている。
代名詞の例
я(ja)
「私」
себе(sebe)
「自身」
мій(mij)
「私の」
цей(cej)
「この」
що(ščo)
「何」
хто(xto)
「誰」
щось(ščosʹ)
「何か」
ніщо(niščo)
「何も…ない」
動詞
動作や状態などを表す。
ウクライナ語の動詞にはアスペクト(相)を表す体というカテゴリーがあり,すべての動詞は不完了体か完了体またはその両方に属している。そして,多くの動詞は基本的な意味が同じで体だけが異なる二つの動詞が,ペアを作っている。例えば,читати「読む(不完了体)」とпрочитати「読む(完了体)」など。
動詞は,法・時制・人称・性・数などに従って活用する。
- Він читає газету.
-
Vin
彼(3sg).nom
čyta-je
読む-3sg.prs
hazet-u
新聞-sg.acc
- 彼は新聞を読んでいる。
例文5では,主語がвін「彼」(3人称・単数)で,現在のことを表しているので,動詞читати「読む」が3人称・単数・現在形に活用している。
動詞
читати(čytaty)
「読む」
говорити(hovoryty)
「話す」
слухати(sluxaty)
「聴く」
бачити(bačyty)
「見る」
іти(ity)
「行く」
їсти(jisty)
「食べる」
знати(znaty)
「知っている」
хотіти(xotity)
「ほしい」
数詞
基数詞・序数詞・集合数詞などがあり,いずれも格変化する。基数詞と集合数詞は人や物の数を表し,特定の格の名詞と結びつく。序数詞は順序を表す数詞で,形容詞のように名詞を修飾する。
- три книги
-
tr-y
3-nom
knyh-y
本-pl.nom
- 3冊の本
- третя книга
-
tret-ja
3番目の-f.sg.nom
knyh-a
本(f)-sg.nom
- 3番目の本
基数詞の「2」から「4」までは,主格のとき名詞の複数主格と結びつくというルールがあるため,例文6ではтри「3」(主格)とкниги「本」(複数主格)という結びつきになっている。
例文7では,序数詞третій「3番目の」が形容詞的に使われ,книга「本」(女性名詞・単数・主格)に合わせて女性・単数・主格形になっている。
1から10までの数詞
1
один(odyn)
2
два(dva)
3
три(try)
4
чотири(čotyry)
5
п'ять(pʺjatʹ)
6
шість(šistʹ)
7
сім(sim)
8
вісім(visim)
9
дев'ять(devʺjatʹ)
10
десять(desjatʹ)
副詞
動詞・形容詞・副詞などを修飾する。基本的に語形変化しないが,形容詞から派生した一部の副詞には比較級・最上級がある。
- Вона завжди читає книги.
-
Vona
彼女.nom
zavždy
いつも
čyta-je
読む-3sg.prs
knyh-y
本-pl.acc
- 彼女はいつも本を読んでいる。
例文8では,завжди「いつも」がчитає「読んでいる」を修飾している。
副詞の例
добре(dobre)
「良く」
високо(vysoko)
「高く」
зараз(zaraz)
「今」
сьогодні(sʹohodni)
「今日」
завжди(zavždy)
「いつも」
дуже(duže)
「とても」
разом(razom)
「一緒に」
тут(tut)
「ここで」
述語副詞
語形変化せず,無人称文の述語として用いられる語。ロシア語の用語にならって述語副詞と呼んでおく。
- Сьогодні холодно.
-
Sʹohodni
今日
xolodno
寒い
- 今日は寒い。
例文9ではхолодно「寒い」が述語,сьогодні「今日」は副詞。
述語副詞の例
холодно(xolodno)
「寒い」
тепло(teplo)
「暖かい」
цікаво(cikavo)
「面白い」
важливо(važlivo)
「大事だ」
треба(treba)
「必要だ」
можна(možna)
「できる」
前置詞
名詞の前に置いて,場所・方向・位置関係・付随・起点・着点・目的など,いろいろな表現を作る。前置詞と結びつく名詞は,前置詞の意味によって特定の格になる。前後に来る語の音によっては,前置詞の形が少し変わることもある。
- книга про музику
-
knyha
本
pro
…について
muzyk-u
音楽-sg.acc
- 音楽についての本
前置詞проは,対格の名詞と結びついて「…について」という意味を表す。
前置詞の例
в(v)
「…(の中)に」
на(na)
「…(の上)に」
до(do)
「…へ」
для(dlja)
「…のため」
з(z)
「…と一緒に」
без(bez)
「…なしで」
перед(pered)
「…の前に」
про(pro)
「…について」
接続詞
語や文を並べたり,節を作ったりする。
- собака і кішка
-
sobaka
犬
i
と
kiška
猫
- 犬と猫
接続詞の例
і(i)
「と,そして」
але(ale)
「しかし」
чи(čy)
「または」
якби(jakby)
「もし」
ніж(niž)
「…より」
що(ščo)
「…ということ」
助詞
ほかの語を修飾したりするわけではなく,何かの構文を作ったり,文法的な機能を持つ語が属す。語形変化はしない。
- Вона не палить.
-
Vona
彼女.nom
ne
neg
pal-itʹ
タバコを吸う-3sg.prs
- 彼女はタバコを吸わない。
助詞неを述語の前に置くと,否定文になる。
助詞の例
б(b)
仮定法を作る
чи(čy)
疑問文を作る
не(ne)
否定の印
ось(osʹ)
「ほらここに」
間投詞
驚き,納得などの声を表したり,挨拶,呼びかけなどに使われる語。
- О, ви добре говорите українською мовою.
-
O
intj
vy
あなた(2pl).nom
dobre
上手に
hovor-yte
話す-2pl.prs
ukrajinsʹk-oju
ウクライナの-f.sg.inst
mov-oju
言語(f)-sg.inst
- おお,あなたはウクライナ語を上手に話しますね。
語例は割愛。
参考文献
- 『ニューエクスプレス ウクライナ語(CD付)』白水社,2009年,中澤英彦
- 『初級ウクライナ語文法』三修社,2017年,黒田龍之助
- 「Частини мови — Вікіпедія」2024/06/24閲覧