ドイツ語の品詞について書く。参考文献をもとに,名詞,形容詞,冠詞,代名詞,動詞,数詞,副詞,前置詞,接続詞,間投詞の10個を扱う。
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グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
Ø
無語尾
3
3人称
acc
対格
cop
コピュラ
dat
与格
def
定
f
女性
gen
属格
indf
不定
n
中性
nom
主格
pl
複数
prs
現在
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・抽象的概念など,様々なものの名前を表す。
ドイツ語の名詞は,男性名詞・女性名詞・中性名詞に分かれ,また二つの数(単数・複数)と4個の格(主格・属格・与格・対格)に従って格変化する。主格は主語,属格は与格は間接目的語……など,格変化によっていろいろな役割をする。
また,固有名詞に限らず,すべての名詞は大文字で書き始める。
- Er liest jetzt ein Buch.
-
Er
彼.nom
lies-t
読む-3sg.prs
jetzt
今
ein-Ø
indf-n.sg.acc
Buch-Ø
本(n)-sg.acc
- 彼は今本を読んでいる。
例文1の中性名詞Buch「本」は,ここでは対格で,動詞の直接目的語になっている。
名詞の例
Vater
「父」
Apfel
「りんご」
Sommer
「夏」
See
「海」
Katze
「猫」
Musik
「音楽」
Buch
「本」
Klavier
「ピアノ」
Jahr
「年」
形容詞
人や物の属性・状態などを表す。
ドイツ語の形容詞は,名詞を修飾したり,コピュラとともに述語になったり,そのままの形で副詞としても用いられる。名詞を修飾するときには格変化するが,後ろに来る名詞の性・数・格と,前に来る冠詞類の有無や種類によって決まった語尾がつく。
- ein interessantes Buch
-
ein-Ø
indf-n.sg.nom
interessant-es
面白い-n.sg.nom
Buch-Ø
本(n)-sg.nom
- 面白い本
- Dieses Buch ist interessant.
-
Dies-es
この-n.sg.nom
Buch-Ø
本
(n)-sg.nom ist
cop.3sg.prs
interessant
面白い
- この本は面白い。
例文2では,形容詞interessant「面白い」が,中性名詞のBuch「本」を修飾している。また,ここでは不定冠詞einの後なので,混合変化タイプの中性・単数・主格語尾-esがついている。例文3のように述語に用いられるときは変化しない。
形容詞の例
groß
「大きい」
klein
「小さい」
schwer
「重い」
leicht
「軽い」
weiß
「白い」
rot
「赤い」
schön
「美しい」
frei
「自由な」
冠詞
不定冠詞・定冠詞・否定冠詞がある。常に名詞とともに使われ,いずれも性・数・格に従って格変化する。
- München ist eine Stadt in Deutschland.
-
München-Ø
ミュンヘン-nom
ist
cop.3sg.prs
ein-e
indf-f.sg.nom
Stadt-Ø
都市(f)-sg.nom
in
…に
Deutschland-Ø
ドイツ-sg.dat
- ミュンヘンはドイツの都市です。
- Berlin ist die Hauptstadt Deutschlands.
-
Berlin-Ø
ベルリン-nom
ist
cop.3sg.prs
die
def.f.sg.nom
Hauptstadt-Ø
首都(f)-sg.nom
Deutschland-s
ドイツ-sg.gen
- ベルリンはドイツの首都です。
例文4では,「たくさんあるドイツの都市のうちの一つ」という意味で,不定性を表す不定冠詞が使われている。一方,例文5の「ドイツの首都」はたくさんあるわけではなく一つに限定されるので,定性を表す定冠詞が使われている。
代名詞
ほかの語の代わりをしたり,何かを指し示したりする。
人称代名詞・指示代名詞・所有代名詞・疑問代名詞・関係代名詞など,いろいろな種類がある。いずれも格変化する。
- Sie ist meine Tante.
-
Sie
彼女.nom
ist
cop.3sg.prs
mein-e
私の-f.sg.nom
Tante-Ø
おば(f)-sg.nom
- 彼女は私のおばです。
例文6では,人称代名詞sie「彼女」や,所有代名詞mein「私の」が使われている。meinは後ろに来る名詞の性・数・格に合わせて格変化する(ここでは女性・単数・主格)。
代名詞の例
ich
「私」
er
「彼」
sie
「彼女」
mein
「私の」
dieser
「この」
was
「何」
wer
「誰」
nichts
「何も…ない」
niemand
「誰も…ない」
動詞
動作や状態などを表す。
ドイツ語の動詞は主語の人称・数および法・時制によって活用する。文中での役割的には,助動詞・本動詞という分類ができる。また,一部の動詞は動詞本体から分離する前綴りを持ち,分離動詞と呼ばれる。
- Er liest jetzt ein Buch.
-
Er
彼.nom
lies-t
読む-3sg.prs
jetzt
今
ein-Ø
indf.n.sg.acc
Buch-Ø
本(n)-sg.acc
- 彼は今雑誌を読んでいる。
例文7では,主語がer「彼」(3人称・単数)で,現在のことなので、動詞lesenは3人称・単数・現在形に変化している。
動詞の例
lesen
「読む」
schreiben
「書く」
sprechen
「話す」
hören
「聞こえる」
sehen
「見える」
essen
「食べる」
können
「…できる」
mögen
「…かもしれない」
数詞
具体的な数量を表す基数詞,順序を表す序数詞がある。基数詞の一部は語形変化する。序数詞は基本的に形容詞と同じように変化する。
- drei Bücher
-
drei
3
Bücher-Ø
本:pl-nom
- 3冊の本
- zum ersten mal
-
zum
…に;def.n.sg.dat
erst-en
1番目の-n.sg.dat
mal-Ø
回(n)-sg.dat
- 初めて
例文8のBücherはBuch「本」の複数・主格形。例文9のzumは前置詞zuと定冠詞のdem(中性・単数・与格)が合体した形である。
1から10までの基数詞
1
eins
2
zwei
3
drei
4
vier
5
fünf
6
sechs
7
sieben
8
acht
9
neun
10
zehn
副詞
場所・時間・様態・結果などを表し,語や文を修飾する。本来の副詞は基本的に語形変化しないが,一部の副詞には比較級・最上級の変化がある。
- Er liest jetzt ein Buch.
-
Er
彼.nom
lies-t
読む-3sg.prs
jetzt
今
ein-Ø
indf-n.sg.acc
Buch-Ø
本(n)-sg.acc
- 彼は今雑誌を読んでいる。
jetzt「今,現在」は時間を表す副詞の一つ。
副詞の例
hier
「ここに」
dort
「あそこに」
wo
「どこに」
jetzt
「今」
noch
「まだ」
heute
「今日」
nicht
否定
sehr
「とても」
wohl
「たぶん」
前置詞
特定の格の名詞や代名詞の前に置いて,様々な意味を導く。語形変化はしない。前置詞の後には,副詞や別の前置詞句が続くこともある。
- Er ist aus Deutschland.
-
Er
彼.nom
ist
cop.3sg.prs
aus
…出身の
Deutschland-Ø
ドイツ-sg.dat
- 彼はドイツの出身です。
前置詞ausには様々な意味があるが,ここでは与格の名詞と結びついて,出身を表している。
前置詞の例
in
「…(の中)に」
aus
「…(の中)から」
von
「…から,…の」
nach
「…の方へ」
an
「…に(接して)」
vor
「…の前に」
zu
「…に,へ」
mit
「…と一緒に」
接続詞
語と語あるいは文と文などをつなぐ。語形変化はしない。
- heute oder morgen
-
heute
今日
oder
か
morgen
明日
- 今日か明日
例文12のheute「今日」,morgen「明日」はどちらも時間を表す副詞。
接続詞の例
und
「と,そして」
oder
「か,または」
aber
「しかし」
wie
「…のように」
dass
「…ということ」
ob
「…かどうか」
wenn
「…するとき,もし…」
間投詞
話者の感情を表す語や,呼びかけの語,擬音語など。例えば,ach, oh, pfui, weh, o, halloなどがある。例文は省略。
参考文献
- 『クラウン独和辞典第4版 CD付き』三省堂,2008年,濱川祥枝(監修),信岡資生(編集主幹)
- 『中級ドイツ文法(新装版)』白水社,2018年,中山豊