リトアニア語の品詞について書く。参考文献をもとに,名詞,形容詞,代名詞,数詞,動詞,副詞,前置詞,接続詞,助詞,間投詞,擬音語・擬声語の11個を扱う。
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グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
1
1人称
3
3人称
acc
対格
cop
コピュラ
f
女性
gen
属格
neg
否定
nom
主格
pl
複数
prs
現在
pst
過去
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「2」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・場所・抽象的概念など,様々なものの名前を表す。
リトアニア語の名詞は大きく男性名詞・女性名詞に分けられる。また,二つの数(単数・複数)と,7個の格(主格・属格・与格・対格・具格・位格・呼格)に従って格変化する。主格なら主語,対格なら直接目的語,位格なら場所というように,格変化によって文中でいろいろな役割をする。
- Jis dabar skaito žurnalą.
-
Jis
彼:nom
dabar
今
skait-o
読む-3sg.prs
žurnal-ą
雑誌-sg.acc
- 彼は今雑誌を読んでいる。
例文1のžurnaląは,名詞žurnalas「雑誌」の単数・対格であり,動詞の直接目的語になっている。
名詞の例
tėvas
「父」
obuolys
「りんご」
kalnas
「山」
sniegas
「雪」
muzika
「音楽」
galva
「頭」
gėlė
「花」
savaitė
「週」
形容詞
人や物の属性・性質・状態などを形容する語。
リトアニア語の形容詞は,関係する名詞に合わせて格変化する。そのため,二つの性・二つの数・7個の格による変化がある。ほかに,無人称文の述語として使われる中性形や,非限定形・限定形の区別ももつ。
形容詞は名詞を修飾したり,述語として使われる。
- graži muzika
-
graž-i
美しい-f.sg.nom
muzik-a
音楽(f)-sg.nom
- 美しい音楽
- Ši muzika yra graži.
-
Š-i
この-f.sg.nom
muzik-a
音楽(f)-sg.nom
yra
cop.3sg.prs
graž-i
美しい-f.sg.nom
- この音楽は美しい。
例文2は形容詞が名詞を修飾している例,例文3はコピュラとともに述語になった例。どちらの場合でも,形容詞gražus「美しい」は名詞と性・数・格が一致するように格変化している。
形容詞の例
didelis
「大きい」
mažas
「小さい」
ilgas
「長い」
trumpas
「短い」
baltas
「白い」
juodas
「黒い」
svarbus
「大切な」
gražus
「美しい」
代名詞
ほかの語の代わりをしたり,何かを指し示すのに使う。
人称代名詞・指示代名詞・所有代名詞・疑問代名詞・関係代名詞など,いろいろな種類がある。名詞的な働きをするものと,形容詞的な働きをするものがあり,それぞれ格変化する。
- Jis japonas.
-
Jis
彼:nom
japon-as
日本人-sg.nom
- 彼は日本人だ。
- ši muzika
-
š-i
この-f.sg.nom
muzik-a
音楽(f)-sg.nom
- この音楽
例文4のjis「彼」は3人称の人称代名詞で,ここでは主格・主語。例文5のšiは,指示代名詞šisの女性・単数・主格形(muzika「音楽」に合わせて格変化している)。
代名詞の例
aš
「私」
jis
「彼」
šis
「これ,この」
tas
「それ,その」
kas
「何,誰」
kuris
「どの」
visas
「すべての」
数詞
具体的な数を表す基数詞や,順番を表す序数詞,複数形しかない名詞を数える集合数詞などがある。それぞれ格変化する。
- dvi knygos
-
dv-i
2-f.nom
knyg-os
本(f)-pl.nom
- 2冊の本
antra knyga
-
antr-a
2番目の-f.sg.nom
knyg-a
本(f)-sg.nom
- 2番目の本
例文6は基数詞,例文7は序数詞の例。基数詞のdu「2」には性と格の変化があり,結びつく名詞は複数形になる。
1から10まで基数詞
1
vienas
2
du
3
trys
4
keturi
5
penki
6
šeši
7
septyni
8
aštuoni
9
devyni
10
dešimt
動詞
動作や状態などを表す。
リトアニア語の動詞は,主語の人称・数および法・時制によって活用する。人称の区別を持たない分詞や,まったく変化しない副分詞などもある。
- Jis dabar skaito žurnalą.
-
Jis
彼:nom
dabar
今
skait-o
読む-3sg.prs
žurnal-ą
雑誌-sg.acc
- 彼は今雑誌を読んでいる。
例文8のskaitoは,動詞skaityti「読む」の3人称・単数・現在形。
動詞の例
skaityti
「読む」
rašyti
「書く」
mokyti
「教える」
manyti
「思う」
gerti
「飲む」
mylėti
「愛する」
副詞
動作の様子や,時間・場所などを表す。形容詞から派生した副詞には比較級・最上級がある。
- Jis dabar skaito žurnalą.
-
Jis
彼:nom
dabar
今
skait-o
読む-3sg.prs
žurnal-ą
雑誌-sg.acc
- 彼は今雑誌を読んでいる。
dabar「今」は時間を表す副詞。
副詞の例
gerai
「上手に」
ten
「そこに」
čia
「ここに」
šiandien
「今日」
rytoj
「明日」
dabar
「今」
visada
「いつも」
labai
「とても」
前置詞
前置詞は,特定の格の語と結びついていろいろな意味を表す。語形変化はしない。
- į Japoniją
-
į
…へ
Japonij-ą
日本
-sg.acc
- 日本へ
前置詞įは,対格の名詞と結びついて「…へ」という意味を表す。
前置詞の例
su
「…と,…つきの」
be
「…なしの」
pas
「…のところに」
dėl
「…のせいで」
iki
「…まで」
nuo
「…から」
į
「…へ」
per
「…を通じて」
už
「…の後ろに」
接続詞
語と語,文と文などをつなぐ働きをする。語形変化はしない。
- šeštadienį
arba sekmadienį
-
šeštadien-į
土曜日-sg.acc
arba
か
sekmadien-į
日曜日-sg.acc
- 土曜日か日曜日に
曜日名の対格は「~に」の意味になる。
接続詞の例
ir
「と,そして」
arba
「か,または」
bet
「でも,しかし」
kad
「…ということ」
negu
「…より」
jei
「もし…」
助詞
文の内容に対する話者の態度などを表し,文に何らかのニュアンスを付け加える。
- Aš dar neskaičiau tos knygos.
-
Aš
私.nom
dar
まだ
ne-skaič-iau
neg-読む-1sg.pst
t-os
その-f.sg.gen
knyg-os
本(f)-sg.gen
- 私はまだその本を読んでいない。
例文12は,dar「まだ」と動詞の過去・否定形を使った「まだ~していない」という内容の文。否定文のため,直接目的語が対格ではなく属格になっている。
助詞の例
ar
疑問
jau
「すでに,もう」
gal
「たぶん」
dar
「まだ」
ne
否定
net
「…さえ」
tik
「…だけ」
vėl
「また」
間投詞
話者の感情を表す語や,挨拶のことば。例えば,ak, o, alioなど。
作るのが大変なので,例文・語例は省略。
擬音語・擬声語
リトアニア語ではištiktukas,日本語では「擬音語,擬声語」または「オノマトペ」などと呼ばれるもの。動作の音を耳で聞き取ったものなど,様々な感覚的イメージを音で模倣したもの。
Wikipediaリトアニア語版の「Kalbos dalis – Vikipedija」によると,このištiktukasがリトアニア語の11の品詞の一つに含まれている。例文・語例は省略。
参考文献
- 『ニューエクスプレス リトアニア語(CD付)』白水社,2007年,櫻井映子
- 「Kalbos dalis – Vikipedija」2024/07/17閲覧
- 「Dalelytė – Vikipedija」2024/07/17閲覧
- 「Jaustukas – Vikipedija」2024/07/17閲覧
- 「Ištiktukas – Vikipedija」2024/07/17閲覧