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セルビア語の《基数詞のしくみ》

 セルビア語の《基数詞のしくみ》について書く。セルビア語の基数詞が数をどう表しているか,その構造・しくみをまとめる。このテーマについて詳しくは「テーマ《基数詞のしくみ》の記事リスト」に。

 必要に応じて,キリル文字をラテン文字化して表記する。詳しくは「キリル文字の《ラテン文字化》」を参照。

  • 目次-CONTENTS-

 

セルビア語の基数詞

 двадесет један「21」やдве хиљаде「2,000」のように,いくつかの基数詞を組み合わせたものを合成数詞と呼ぶことにする。

0

0

нула(nula)

 

1から9

1

један(jedan)

2

два(dva)

3

три(tri)

4

четири(četiri)

5

пет(pet)

6

шест(šest)

7

седам(sedam)

8

осам(osam)

9

девет(devet)

 「1」には性・数・格の変化が,「2」には性と格の変化がある。「1」の単数主格形と,「2」の主格形を挙げておく。

「1」の主格形

  男性 中性 女性
1 један
(jedan)
једно
(jedno)
једна
(jedna)

「2」の主格形

  男性・中性 女性
2 два
(dva)
две
(dve)

 

10から19

10

десет(deset)

11

једанаест(jedanaest)

12

дванаест(dvanaest)

13

тринаест(trinaest)

14

четрнаест(četrnaest)

15

петнаест(petnaest)

16

шеснаест(šesnaest)

17

седамнаест(sedamnaest)

18

осамнаест(osamnaest)

19

деветнаест(devetnaest)

 「11から19」の基数詞は,1から9+наестで,"10の上に1","10の上に2","10の上に3"……という構造をしている。наестは前置詞のна「~の上に」と数詞の「10」が合わさって変化した形。

 

20から90

20

двадесет(dvadeset)

30

тридесет(trideset)

40

четрдесет(četrdeset)

50

педесет(pedeset)

60

шездесет(šezdeset)

70

седамдесет(sedamdeset)

80

осамдесет(osamdeset)

90

деведесет(devedeset)

 「20から90」の基数詞は,1から9+десет(10)で,"2つの10","3つの10","4つの10"……という構造をしている。

 「20から90」の後に「1から9」の基数詞を続けると,「21から99」の合成数詞ができる。

99以下の合成数詞①

21

двадесет један

22

двадесет два

33

тридесет три

44

четрдесет четири

55

педесет пет

66

шездесет шест

77

седамдесет седам

88

осамдесет осам

99

деведесет девет

 10の位と1の位の間に接続詞のи(i)を挟んでつなげても良い(→「#補足」)。

99以下の合成数詞②

21

двадесет и један

22

двадесет и два

 

100から900

100

сто(sto)

200

двеста(dvesta)

300

триста(trista)

400

четиристо(četiristo)

500

петсто(petsto)

600

шестсто(šeststo)

700

седамсто(sedamsto)

800

осамсто(osamsto)

900

деветсто(devetsto)

 「200から900」の基数詞は,2から9+ста/стоで,"2つの100","3つの100","4つの100"……という構造になる。さらに,「100」を表すには女性名詞стотина(stotina)という語もある。стотинаを使う場合は以下のようになり,前に来る基数詞が「2から4」のときは単数生格стотине,「5以上」のときは複数生格стотинаになる。

  単数主格 単数生格 複数生格
100 стотина
(stotina)
стотине
(stotine)
стотина
(stotina)

100

стотина

200

две стотине

300

три стотине

400

четири стотине

500

пет стотина

600

шест стотина

700

седам стотина

800

осам стотина

900

девет стотина

 「100から900」の基数詞の後に「99以下」の基数詞を続けると,「999以下」の合成数詞を作れる。

999以下の合成数詞

101

сто један

202

двеста два

310

триста десет

411

четиристо једанаест

520

петсто двадесет

630

шестсто тридесет

722

седамсто двадесет два

833

осамсто тридесет три

999

деветсто деведесет девет

 

1000以上

1,000

хиљада(hiljada)

1,000,000(100万)

милион(milion)

1,000,000,000(10億)

милијарда(milijarda)

1,000,000,000,000(1兆)

билион(bilion)

 「1000以上」の基数詞には上のような位を表す数詞があり,3桁ごとに位が変わる。前に「999以下」の基数詞を置いて「2,000」などの合成数詞を作る場合,位を表す数詞は前に来る基数詞に合わせて格変化させる。例えば主格が要求されるとき,「1」の後では単数主格だが,「2から4」の後では単数生格,「5以上」の後では複数生格になる。

前に来る数詞   位を表す数詞
末尾が「1」 単数主格
末尾が「2から4」 単数生格
末尾が「5以上」 複数生格
  単数主格 単数生格 複数生格
1,000 хиљада
(hiljada)
хиљаде
(hiljade)
хиљада
(hiljada)
1,000,000
(100万)
милион
(milion)
милиона
(miliona)
милиона
(miliona)
1,000,000,000
(10億)
милијарда
(milijarda)
милијарде
(milijarde)
милијарди
(milijardi)
1,000,000,000,000
(1兆)
билион
(bilion)
билиона
(biliona)
билиона
(biliona)

 このうち,милион「100万」とбилион「1兆」は男性名詞,хиљада「1000」とмилијарда「10億」は女性名詞なので,「1」「2」が前に来るときは性の区別を一致させる。数としては5以上でも,末尾に「1」があれば単数主格,「2から4」があれば単数生格で結びつく。

1000以上の合成数詞①

2,000

две хиљаде

10,000

десет хиљада

15,000

петнаест хиљада

25,000

двадесет пет хиљада

50,000

педесет хиљада

100,000

сто хиљада

101,000

сто једна хиљада

102,000

сто две хиљаде

999,000

деветсто деведесет девет хиљада

 より小さい基数詞を後ろに続けると以下のようになる。

1000以上の合成数詞②

1,001

хиљада један

1,010

хиљада десет

1,050

хиљада педесет

1,099

хиљада деведесет девет

1,100

хиљада сто

1,234

хиљада двеста тридесет четири

1,000,001

милион један

1,001,000

милион хиљада

1,234,567

милион двеста тридесет четири хиљаде петсто шездесет седам

 

補足

 合成数詞を作るときは,10の位と1の位の間に接続詞и(i)を書いても良いし,書かなくても良い。今回はすべて省略して書いた。その理由をちょっと書いておく。

 この接続詞иは,例えばсто и један「101」など,10の位と1の位の間以外の位置にも現れる。では「100の位と10の位」「1000の位と1の位」など,ほかの位置ではどうなのか…? そのあたりが詳しく知りたかったが,結局よく分からなかったので,今回はなるべく接続詞иを使わずに例示した。

 

まとめ

 ここまで,セルビア語の基数詞をいくつかのグループに分けて見てきた。最後に,それぞれの基数詞の特徴を簡単にまとめておく。

0

  • ほかの基数詞と組み合わせて合成数詞を作らない。

1から9

  • 「1」と「2」には性の区別がある。
  • 「20から90」「100から900」「1000以上」の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

10から19

  • 「100から900」「1000以上」の基数詞の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

20から90

  • 「1から9」の基数詞を後に続けて合成数詞を作る。
  • 「100から900」「1000以上」の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

100から900

  • стоを使った言い方と,стотинаを使った言い方の2通りがある。
  • 「99以下」の基数詞を後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

1000以上

  • 「999以下」の基数詞を前に置いて合成数詞を作る場合,名詞として格変化する。
  • より小さい基数詞を後に続けて合成数詞を作る。

 

参考文献

 

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