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チェコ語の《基数詞のしくみ》

 チェコ語の《基数詞のしくみ》について書く。チェコ語の基数詞が数をどう表しているのか,その構造・しくみをまとめる。このテーマについて詳しくは「テーマ《基数詞のしくみ》の記事リスト」に。

  • 目次-CONTENTS-

 

チェコ語の基数詞

 チェコ語の基数詞は,主格・生格・与格・対格・造格・前置格の6種類の格変化を持つ。また「1」と「2」には性の区別がある。ただここでは,語形変化については最低限必要なことに絞って説明し,あまり深追いはしない。

 基数詞のうち,1語で表せるものを単純数詞,単純数詞を並べたものや,aを使ってつなげたもの(jednadvacet「21」など)を合成数詞と呼ぶことにする。

0

0

nula

 

1から9

1

jeden

2

dva

3

tři

4

čtyři

5

pět

6

šest

7

sedm

8

osm

9

devět

 「1」と「2」には性の区別がある。以下主格形だけ挙げておく。

  男性 中性 女性
1 jeden jedno jedna
2 dva dvě

 

10から19

10

deset

11

jedenáct

12

dvanáct

13

třináct

14

čtrnáct

15

patnáct

16

šestnáct

17

sedmnáct

18

osmnáct

19

devatenáct

 「11から19」の基数詞は,1から9+náctで,"10の上に1","10の上に2","10の上に3"……という構造になっている。náctは前置詞のna(~の上に)と数詞の「10」が合わさった形。

 

20から90

20

dvacet

30

třicet

40

čtyřicet

50

padesát

60

šedesát

70

sedmdesát

80

osmdesát

90

devadesát

 「20から90」の基数詞は,2から9+cet/desát(10)で,"2つの10","3つの10","4つの10"……という構造になっている。cet/desátはどちらも「10」の変化した形。

 「21から99」の言い方はいくつかある。「20から90」の後に「1から9」の基数詞を続ける場合は,「1」はjedna,「2」はdvaで性の区別をしない。

99以下の合成数詞①

21

dvacet jedna

22

dvacet dva

33

třicet tři

44

čtyřicet čtyři

55

padesát pět

66

šedesát šest

77

sedmdesát sedm

88

osmdesát osm

99

devadesát devět

 または,「1から9」+a+「20から90」という風に1の位を前に出して,1語につなぎ書きする方法もある。この場合も「1」や「2」は性によって変化しない。「1」はjedna-またはjedena-。

99以下の合成数詞②

21

jednadvacet, jedenadvacet

22

dvaadvacet

33

třiatřicet

44

čtyřiačtyřicet

55

pětapadesát

66

šestašedesát

77

sedmasedmdesát

88

osmaosmdesát

99

devětadevadesát

 

100から900

100

sto

200

dvě stě

300

tři sta

400

čtyři sta

500

pět set

600

šest set

700

sedm set

800

osm set

900

devět set

 「200から900」の基数詞は,2から9+stoの変化形で,"2つの100","3つの100","4つの100"……という構造になっている。stoは「2」の後ではstě,「3, 4」の後では複数主格sta,「5」の後で複数生格setになる(主格・対格のとき)。「2」の後のstěは双数形の名残。

 「100から900」の後に「99以下の基数詞」をそのまま続けると,「999以下」の合成数詞が作れる。「101」「202」などで「1」はjedna,「2」はdvaで性の区別をしない。

999以下の合成数詞

101

sto jedna

202

dvě stě dva

310

tři sta deset

411

čtyři sta jedenáct

520

pět set dvacet

630

šest set třicet

722

sedm set dvacet dva

833

osm set třicet tři

999

devět set devadesát devět

 「99以下」はjednadvacet「21」のように1の位を前に出した言い方でも良い。

 

1000以上

1,000

tisíc

1,000,000(100万)

milion, milión

1,000,000,000(10億)

miliarda

1,000,000,000,000(1兆)

bilion, bilión

 「1000以上」の基数詞には上のような位を表す数詞があり,3桁ごとに位が変わる。「2,000」「10,000(1万)」「100,000(10万)」などの数は,位を表す基数詞の前に「999以下」の基数詞を置いて表す。

 「999以下」の基数詞を前に置くとき,位を表す数詞は名詞として格変化する。前に来る基数詞が主格のときは,「2, 3, 4」の後では複数主格,合成数詞も含めた「5以上」の数詞の後では常に複数生格になる。格の対応と,位を表す数詞の格変化(単主・複主・複生)は以下のとおり。

前に来る基数詞   位を表す数詞
2, 3, 4 複数主格
5以上(合成数詞含む) 複数生格
  単数主格 複数主格 複数生格
1,000 tisíc tisíce tisíc
1,000,000
(100万)
milion, milión miliony, milióny milionů, miliónů
1,000,000,000
(10億)
miliarda miliardy miliardů
1,000,000,000,000
(1兆)
bilion, bilión biliony, bilióny bilionů, biliónů

 miliarda「10億」は女性名詞,ほかは男性名詞だが,前に来る基数詞が「1」「2」のときは性を一致させる。しかし前に来るのがjedna「1」dva「2」で終わる合成数詞の場合は,性の区別をしない。また,「1000」や「100万」を表すときは,前に「1」を置かなくても良い。

1000以上の合成数詞①

2,000

dva tisíce

10,000

deset tisíc

15,000

patnáct tisíc

25,000

dvacet pět tisíc

50,000

padesát tisíc

100,000

sto tisíc

101,000

sto jedna tisíc

102,000

sto dva tisíc

999,000

devět set devadesát devět tisíc

 そして,より小さい基数詞は後ろにそのまま続けることができる。

1000以上の合成数詞②

1,001

tisíc jedna

1,010

tisíc deset

1,050

tisíc padesát

1,099

tisíc devadesát devět

1,100

tisíc sto

1,234

tisíc dvě stě třicet čtyři

1,000,001

milion jedna

1,001,000

milion tisíc

1,234,567

milion dvě stě třicet čtyři tisíce pět stě šedesát sedm

 上の例ではmilionを使ったが,miliónでももちろん良い。また,組み合わせる「99以下」の合成数詞はjednadvacet「21」のように1の位を前に出した言い方でも良い。

 

補足

 合成数詞を作るとき,1の位の「1」はjedna,「2」はdvaで,性の変化はない。しかしjeden/jedno/jednaおよびdva/dvěと性の変化をする言い方もある。その場合は,「1000以上」の基数詞の前に置くときも男性形・女性形を使い分ける。

 ただこの言い方は「České číslovky – Wikipedie」によると廃れてきているらしい。どちらの言い方がどれくらい普通なのかは分からないが,今回は「性の変化なし」の言い方でまず説明し,「性の変化あり」の言い方を補足とした。

 

まとめ

 ここまで,チェコ語の基数詞をいくつかのグループに分けて見てきた。最後に,それぞれの基数詞の特徴を簡単にまとめておく。

0

  • ほかの基数詞と組み合わせて合成数詞を作らない。

1から9

  • 「1」「2」には性の区別がある。
  • 「20から90」と組み合わせて「21から99」の合成数詞を作る。作り方はいくつかある。
  • 「100から900」「1000以上」の基数詞の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

10から19

  • 「100から900」「1000以上」の基数詞の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

20から90

  • 「1から9」と組み合わせて合成数詞を作る。作り方はいくつかある。
  • 「100から900」「1000以上」の基数詞の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

100から900

  • 「99以下」の基数詞を後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の後に続けて合成数詞を作る。
  • 「1000以上」の基数詞の前に置いて合成数詞を作る。

1000以上

  • 「999以下」の基数詞を前に置いて合成数詞を作る場合格変化する。
  • より小さい基数詞を後ろに続けて合成数詞を作る。

 

参考文献

 

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