ロシア語の品詞について書く。今回は,各種参考文献・サイトを参考に,名詞,形容詞,代名詞,動詞,数詞,副詞,述語副詞,前置詞,接続詞,助詞,間投詞,挿入語の12個を扱う。
必要に応じて,キリル文字をラテン文字化して表記する。詳しくは「キリル文字のラテン文字化」を参照。
- 目次-CONTENTS-
- 更新履歴
- 一部誤字を修正
- 一部加筆・修正
- 一部脱字を修正
- 目次の後の略号リストとグロスに関する部分を少し変更・追記
- グロスを一部修正
グロスと略号
例文には適宜グロスをつける。この記事で使うグロスの略号は以下のとおり。グロスについて詳しくは「グロスについて」を参照。
Ø
ゼロ要素
3
3人称
acc
対格
cop
コピュラ
f
女性
gen
属格/生格
inst
具格/造格
intj
間投詞
m
男性
neg
否定
nom
主格
part
助詞
pl
複数
prepl
前置格
prs
現在
pst
過去
sbjv
仮定法
sg
単数
また,人称を表す略号と区別するため,数詞を表すときは「3」のように数字にアンダーラインを引いた。
名詞
人・物・場所・抽象的概念など,さまざまなものの名前を表す。
ロシア語の名詞には男性名詞・女性名詞・中性名詞の区別がある。また,二つの数(単数・複数)と,6個の格(主格・生格・与格・対格・造格・前置格)に従って格変化する。格変化によって,主語・目的語・修飾語など,いろいろな働きをする。
- Он читает газету.
-
On
彼.nom
čita-et
読む-3sg.prs
gazet-u
新聞-sg.acc
- 彼は新聞を読んでいる。
例文1では,газета「新聞」が対格(acc)に格変化して,動詞читать「読む」の目的語になっている。
名詞の例
врач(vrač)
「医者」
рыба(ryba)
「魚」
ухо(uxo)
「耳」
газета(gazeta)
「新聞」
банк(bank)
「銀行」
море(more)
「海」
музыка(muzyka)
「音楽」
сон(son)
「夢」
形容詞
人やものの属性・性質・状態などを表す。
ロシア語の形容詞には,修飾語や述語として用いられる長語尾形と,主に述語として用いられる短語尾形がある。また,長語尾形には三つの性(男性・女性・中性),二つの数(単数・複数),6個の格(主格・生格・与格・対格・造格・前置格)の格変化があり,関係する名詞の格変化に一致する。
- большая собака
-
bolʹš-aja
大きい-f.sg.nom
sobak-a
犬(f)-sg.nom
- 大きい犬
- Наша собака большая.
-
naš-a
私たちの-f.sg.nom
sobak-a
犬(f)-sg.nom
bolʹš-aja
大きい-f.sg.nom
- うちの犬は大きい。
例文2は修飾語,例文3は述語の例。どちらの場合も,собака「犬」が女性名詞・単数・主格形なので,большой「大きい」にも女性・単数・主格の語尾がついている。
形容詞の例
большой(bolʹšoj)
「大きい」
маленький(malenʹkij)
「小さい」
новый(novyj)
「新しい」
старый(staryj)
「古い」
белый(belyj)
「白い」
чёрный(čërnyj)
「黒い」
соседкий(sosedkij)
「隣の」
японский(japonskij)
「日本の」
代名詞
人や物などを表す名詞の代わりをしたり,何かを指し示すような語。
人称代名詞・再帰代名詞・所有代名詞・指示代名詞・数量代名詞・疑問代名詞・定代名詞・不定代名詞・否定代名詞・関係代名詞などの種類がある。どれも,性・数・格の全部または一部に従って格変化する。種類によって多少異なるが,名詞に近い働きをしたり,形容詞に近い働きをしたりする。
- Я японский.
-
Ja
私.nom
japonsk-ij
日本人-m.sg.nom
- 私は日本人です。
- какой человек
-
kak-oj
どんな-m.sg.nom
čelovek-Ø
人(m)-sg.nom
- どんな人
例文4は人称代名詞я「私」(主格)が主語として用いられている。例文5は疑問代名詞какой「どんな」が名詞を修飾していて,человек「人」に一致するように男性・単数・主格の語尾がついている。
代名詞の例
я(ja)
「私」
себя(sebja)
「自身」
мой(moj)
「私の」
этот(ètot)
「この,その」
много(mnogo)
「たくさんの」
что(čto)
「何」
каждый(každyj)
「それぞれの」
что-то(čto-to)
「何か」
ничто(ničto)
「何も…ない」
動詞
動作・状態などを表す。
ロシア語の動詞にはアスペクト(相)を表す体というカテゴリーが存在し,すべての動詞は不完了体か完了体のどちらか,または両方に属している。また,多くの動詞は,基本的な意味が同じで体だけが異なる二つの動詞がペアになっている。例えば,читать「読む(不完了体)」とпрочитать「読む(完了体)」など。
動詞は,法・時制・人称・性・数などに従って活用する。
- Он читает газету.
-
On
彼(3sg).nom
čita-et
読む-3sg.prs
gazet-u
新聞-sg.acc
- 彼は新聞を読んでいる。
例文6では,主語がон「彼」(3人称・単数)で,現在のことを表しているので,動詞читать「読む」は3人称・単数・現在形になっている。
動詞の例
читать(čitatʹ)
「読む」
писать(pisatʹ)
「書く」
видеть(videtʹ)
「見る」
идти(idti)
「行く」
есть(estʹ)
「食べる」
говорить(govoritʹ)
「言う,話す」
делать(delatʹ)
「する,作る」
работать(rabotatʹ)
「働く」
※すべて不完了体
数詞
数や順序を表す。
個数詞,順序数詞,集合数詞などがあり,いずれも格変化する。個数詞・集合数詞は数量を表すため,数量詞とも呼ばれる。順序数詞はтретий「3番目の」のように順序を表す数詞で,形容詞的に使われる。
- три студента
-
tr-i
3-nom
student-a
学生-sg.gen
- 3人の学生
- третий студент
-
tret-ij
3番目の-sg.nom
student-Ø
学生-sg.nom
- 3番目の学生
個数詞の「2」から「4」は,主格のとき名詞の単数生格と結びつくというルールがあるため,例文7では,три「3」(主格)とстудента「学生」(単数生格)という結びつきになっている。
例文8では,順序数詞третий「3番目の」が形容詞的に使われ,студент「学生」(男性名詞・単数・主格)に合わせて男性・単数・主格形になっている。
1から10までの個数詞
1
один(odin)
2
два(dva)
3
три(tri)
4
четыре(četyre)
5
пять(pjatʹ)
6
шесть(šestʹ)
7
семь(semʹ)
8
восемь(vosemʹ)
9
девять(devjatʹ)
10
десять(desjatʹ)
副詞
動詞・形容詞・副詞などを修飾する。語形変化はしない。
- Он всегда читает газет.
-
On
彼
vsegda
いつも
čita-et
読む-3sg.prs
gazet-Ø
新聞-pl.acc
- 彼はいつも新聞を読んでいる。
例文9では,всегда「いつも」がчитает「読んでいる」を修飾している。
副詞の例
хорошо(xorošo)
「よく」
рано(rano)
「早く」
сейчас(sejčas)
「今」
сегодня(segodnja)
「今日」
всегда(vsegda)
「いつも」
недавно(nedavno)
「最近」
здесь(zdesʹ)
「ここで」
очень(očenʹ)
「とても」
уже(uže)
「すでに」
ещё(eščë)
「もっと」
述語副詞
述語としてのみ用いられる副詞で,主語を必要としない無人称文を作る。語形変化はしない。
- Сегодня холодно.
-
Segodnja
今日
xolodno
寒い
- 今日は寒い。
例文10ではхолодно「寒い」が述語,сегодня「今日」は副詞。
述語副詞の例
холодно(xolodno)
「寒い」
тепло(teplo)
「暖かい」
стыдно(stydno)
「恥ずかしい」
весело(veselo)
「楽しい」
рано(rano)
「早い」
поздно(pozdno)
「遅い」
надо(nado)
「必要だ」
можно(možno)
「できる」
前置詞
名詞の前に置かれて,場所・方向・位置関係・付随・起点・目的など,様々な表現を作る。
前置詞の意味によって,結びつく名詞は特定の格に変化する。前置詞自体は語形変化しないが,続く名詞の最初の音によって,形が少し変わることがある。
- книга об истории
-
kniga
本
ob
…について
istori-i
歴史-sg.prepl
- 歴史についての本
例文11では,истории「歴史」(単数前置格)が母音で始まっているので,о「…について」がобになっている。ちなみに前置格は,単独では使われず,前置詞と結びつくときだけ使われる格である。
前置詞の例
в(v)
「…(の中)に」
на(na)
「…(の上)に」
из(iz)
「…(の中)から」
с(s)
「…と(一緒に)」
перед(pered)
「…の前に」
за(za)
「…の後ろに」
у(u)
「…のそばに」
о(o)
「…について」
接続詞
語や文を結び付ける。二つの要素を対等な関係で結びつける等位接続詞と,一つの要素を従えて従属節を作る従属接続詞がある。語形変化はしない。
- интересная и полезная книга
-
interesn-aja
面白い-f.sg.nom
i
そして
polezn-aja
役に立つ-f.sg.nom
knig-a
本(f)-sg.nom
- 面白くて役に立つ本
接続詞の例
и(i)
「と,そして」
или(ili)
「か,または」
но(no)
「しかし」
если(esli)
「もし…なら」
как(kak)
「…のように」
когда(kogda)
「…するとき」
что(čto)
「…ということ」
чтобы(čtoby)
「…するために」
助詞
ほかの語を修飾したりするわけではなく,何かの構文を作ったり,文法的な機能を持つ語が属す。語形変化はしない。
- Если бы ты был японским...
-
Esli
もし
by
part.sbjv
ty
あなた
by-l
cop-pst.m.sg
japonsk-im
日本人-m.sg.inst
- もしあなたが日本人だったら...
例文13は,仮定法(бы+動詞の過去形)を使った条件文。今回は省略したが,本来ならこの後に帰結節(「もっと早く出会っていたのに」など)が続く。
助詞の例
да(da)
「はい」
нет(net)
「いいえ」
бы(by)
仮定法を作る
пусть(pustʹ)
3人称命令を作る
ли(li)
間接疑問文を作る
даже(daže)
「…ですら」
именно(imenno)
「…こそ」
вон(von)
「ほらそこに」
間投詞
驚き,納得などの声を表したり,挨拶や呼びかけなどを表す。
- Ой, сегодня не суббота?
-
Oj
intj
segodnja
今日
ne
neg
subbota
土曜日
- え,今日は土曜日じゃないの?
間投詞の例
а(a)
納得など
ой(oj)
驚きなど
гм(gm)
「ふむ」
эй(èj)
「おい」
алло(allo)
「もしもし」
привет(privet)
「やぁ」
挿入語
文全体を修飾し,文のいろいろな場所に挿入される語。
- Он, конечно, не курит.
-
On
彼
konečno
もちろん
ne
neg
kur-it
タバコを吸う-3sg.prs
- 彼はもちろんタバコを吸わない。
挿入語の例
конечно(konečno)
「もちろん」
значит(značit)
「つまり」
наверно(naverno)
「たぶん」
по-моему(po-moemu)
「私の考えでは」
точно(točno)
「確かに」
например(naprimer)
「例えば」
参考文献
- 『博友社ロシア語辞典〈改訂新版〉』博友社,1995年,木村彰一,佐藤純一,森安達也,栗原成郎,中村喜和,桑野隆,松井茂雄(編)
- 『NHK出版 これならわかる ロシア語文法 入門から上級まで』NHK出版,2016年,匹田剛
- 「間投詞 - ロシア学事始」2024/06/20閲覧
- 「挿入語 - ロシア学事始」2024/06/20閲覧